6. ページ6
火曜日、
結局昨日の夜はあの人のことばかりになってしまって借りた本は読めなかった。
だから今日もこの本を読むために図書室へ向かう。この本を読むために、うん。
自分にそう言い聞かせながらも内心あの人がいないかワクワクしながら入れば、席には座っていない。
また立ちながら読んでいるのかな、そう思ってさがすも今日はいない。
「なんだ…いない、か…」
その場でガクッと肩を落とす。
そりゃそうだよね。私でさえ毎日図書室来るわけじゃないからねぇ。
結局10分程度読んだらなんだか集中力が切れたから諦めて教室に帰った。
「はぁー…ざーんねん…ほわぁ！」
「よっす！」
溜息をつきながら廊下を歩いていたらいきなりポンッと肩を叩かれ、驚いて声を上げてしまう。
振り向けば森本くん1人が立っていた。
「びっくりした〜…！森本くんかぁ。」
「なになに？嬉しい俺で？」
「あーハイハイ嬉しいよ。」
「うわぁ、テキトー！
あ、本借りてきたん？」
私の冷めた反応に対してもテンション高く反応したと思ったらいきなり私の本の方を見て話が変わる。
「あ、うん。ちょっとだけ読んでから戻ってきたんだ。」
「へー、A本当に読書好きなんだなぁ。
俺はそんなに文字読めないわ！」
「あれ、でも図書委員…」
「起きたら決定してた。」
「あぁ…」
予想はしてたけど授業中怠惰なタイプだ。うん、ぽい。
寝てたから押し付けられたんだなきっと。
図書委員にさせられた光景が簡単に想像出来てクスッと笑う。
すると森本くんも満面の笑みを浮かべる。
「笑った！」
「え？」
「いや、なんか元気なさそーだったからどうしたかと思ったから！
俺のおかげで笑顔になれたっしょ！」
「そうだねー、森本くんのおかげだねぇ。」
「思ってないだろその感じ〜」
「思ってるって、ありがとね。」
意外にも気が利く子なんだなぁ。
ちょっとだけど落ち込んでいたことは確かだし、笑ってお礼を言うと、なんとなくだけど顔を赤くして目線をそらされる。
どうしたの、と聞こうとしたら森本くんはあぁ！と声を出す。
「そーいや俺担任とこ呼ばれてるんだったわ！」
「あ、それは行かなきゃだね。何したの？」
「さ、さぁ〜？じゃあまたな！」
「あ、うん。またね？」
私の声も聞かずにばっと走り出す。
さては何かやったな〜？面白いなぁあの子。
森本くんが去ったあと、ふふっとまた笑ってからくるりと教室に戻った。
「やっば…まじ…」
こんなことを言われてると知らずに。
next
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 19人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ぴこら | 作成日時：2018年5月4日 23時
