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こいつはすぐそうやって知らない間に辛い気持ちになって泣く、そう思っていた

何より野球を辞めると言った時も

御幸の知らない間にAがどうしようもないくらい辛い思いを抱えていた

かと言ってAがちゃんと言葉にして辛いです、というのかと言ったらそうじゃない。

じゃあ気がついてやらないと

気にかけて、ちゃんと言えるくらい頼られるようにならないと

いつしかそう思って

彼なりの方法でAがきちんと色んな言いたいことを言えるようにしてきた

その結果、今は些細なことでもAは遠慮なくいうようになっている。

御幸(いつからだったっけな)

御幸(知りたくもねぇもんに気がついてしまったのって)

自分のAへの特別な感情には気がついていた

それもそれで気が付かなくてもよかったのにと思ったことがあった

でもそれを上回るくらい知らなくてよかったと感じたのはAが誰に気持ちを向けているか

御幸(知らない間にいつの間にか目で追ってたら嫌でも気がつくようになって)

御幸(かといって色々できるわけじゃないしそんな余裕なんて今日まで全然なかった)

こんなに頼りない姿を見せてしまっているのに

Aはいつも生意気なくせに首を横に振ってそんなことないと笑いかけてくれた

それでまた好きなんだなって思うと同時に諦めたいのに諦めきれなくなっていく

本当に言わなくていいのか、諦めていいのかと

A「自分のことばっかりで全然気づけなかった」

御幸「え、もしかして泣いてんの？」

ついてっきり即ごめんなさいと断られると思っていたが何故かAはまた泣き出した

確かに鈍いし、全然気がついてくれなかったけどAを責める気なんてない

御幸が慌ててAの顔を見るとやっぱり眉を下げて泣いていた

こういう所に弱いし、こういう所がどうしようもないくらい好き。

御幸「あーもう泣くな泣くな」

A「違う、泣いてなんかない」

御幸「泣かせるとお前の好きなやつが黙ってねーから、俺が怒られる」

一緒にいるとどんなことも忘れられて、その笑顔を見るとどんなことだって頑張れた

今日の試合だってきっとそうだ

選手みんなの力もAを始めとした応援してくれる人達の声があったから

御幸(これ以上泣かせんなって、1番言われたくねぇこと言われたな)