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A「ねぇ、今日誕生日の割には結構あっさりしてない？」

いろんなカップケーキを賭けて争奪戦をしている部員たちを見つつも

自身もカップケーキを頬張る御幸にAが聞けば

すぐにその手が止まった

やっぱりこれは気が付かなかった、というオチか。

御幸「そういやそうだった」

A「やっぱり…おめでとうとか言われなかったの？」

御幸「いや言われたことは言われたんだけど練習してたら全部吹っ飛んでた」

A「年中無休の野球バカ……」

甘いのはあまり好きではないはずなのに

クリームたっぷりのものを次々選んで食べていく

寮に入ってから料理をする回数が減っていたため腕前が不安だったのだがこれは好評…？

御幸「だからこのカップケーキ祭り？」

A「それもあるけど」

御幸「ふーん」

A「前にぬいぐるみ貰ったまま一也にはお返しというお返しできてなかったからそれも含めてだね」

御幸「なるほど」

欲しかったぬいぐるみを鳴と御幸から貰ったことをAは忘れたことがない

あの後同じシニアだった鳴にはお礼としてアイスを奢ったりすることは出来たのだが

当然別のシニアである御幸とはなかなか会うことがなく

だからずっとお礼をする機会を逃し続け、数年後の今日返すことが叶った。

A「怪我、早く治るといいね」

御幸「これ食ったらもっと痛くなりそう」

A「またそうやって！！言っとくけど栄純あれで10個目で美味しい美味しいって食べてくれたんだからね！！」

御幸「10個目？どんだけハイスピードだよ」

せっかく珍しく優しい言葉をかけても

いつもこうやって返される

実はそれは照れ隠し、ということにAはずーっと気づくことはないだろう。

御幸「嘘だよ、ありがとな」

A「………………」

御幸「怒ってんのか？ほらお前も食えよ」

A「もがっ…もがふぁふぁふぁ！」

御幸「ははっ、何言ってるかわかんねー」

Aが優しい言葉をかけるよりも珍しいことが起こった

御幸がからかいの笑顔でもなく、悪いことを考えた時の笑顔でもなく

ただ純粋に1人の子供のように笑った。

御幸「意外と美味い、あとはホイップの絞り方だな」

A「意外は余計なの」

好きだと言っても言わなくても

やっぱ、距離感は変わらず。