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A「頑張って勝ってね、向こうでちゃんと信じて待ってる」
ベンチに戻ろうとした御幸の耳に届く素直な声
背中を掴む小さな手
そんなことを言われたらどれだけ痛くたって辛くたって頑張れてしまう気がしてきた
御幸「A」
A「あー、もういいよ!はいはいいつものですよね!なーんも言わなく…」
御幸「ごめん、後で殴るなり叩くなりしていいから一瞬だけ」
愛おしかった、どうしようもないくらい好きだって思ってしまった
今だけじゃなくて少し前からずっと。
試合中なのに何してんだよと多少の罪悪感を抱えながら
気がついたら自然と何も考えずにぎゅっとただ、抱きしめていた
御幸「言いたかったことがあるけど、でも今は言えないから…終わったら聞いてくれるか?」
御幸「絶対に勝ってやる、約束する」
本当に一瞬だった
一瞬でも、自分がどれくらいそれをするのに緊張してたのかバクバクとした心臓の音でわかる
そしてAが驚いて息を呑んだことも。
言いたいことがあるなんて言うけどそんな大したことじゃなくて
本当に本当に、些細なこと。
御幸「じゃ、頑張ってくる」
A「………うん」
綺麗な翡翠の目を向けられ、何度目になるのかまた背中を押された
勝てないな、敵わないな、そんな気持ちを感じつつもまた御幸はベンチへと戻った
御幸(ったく…やっぱり生意気で我儘でも好きなんだよな)
御幸「ますます負けらんねぇ、この試合絶対勝つぞ」
たっぷり叱られたしたっぷり心配された
そして背中も押してもらった
Aの我儘のひとつを叶えてやりたい。
A(汗の匂い、でもそんなに気にしてない)
A「約束ありがとう…先輩」
そしてまたAも走ってスタンドへと戻って行くのだった。
言いたいことってなんなんだろうな、なんて思ったけれど深くは考えずに。
6回の表 青道の攻撃
栄純は結局あのあとファーストゴロ
麻生が1塁へと出塁を果たした
真田(ランナー出しちまった…ここから嫌なバッター続くのによ)
打順は先頭に戻り、1番 ショート 倉持へ
そして倉持の次は東条とクリーンナップの春市が続く
相手にとって今回の青道の打順は厄介なものだ
真田(いや…楽しみなバッターか)
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作者名:ちあき | 作成日時:2020年7月28日 22時