【◇】Starting Over

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誰かのいうことを素直に聞いて生きることが

本当に幸せと呼べるのだろうか

政略結婚して好きでもない相手と結ばれて生涯を共にするのが幸せか









A(歳の差半端ない…私と哲先輩たちよりある)







大好きな食事が喉が通らなかった

まるであの頃のようで

食べてもなんも味がしない、何も感じない

周りの賑やかな声さえも耳に入ってこない。









A(なんで私、あんな所で言いなりになってしまったんだろう)

A(嫌なのに…悔しいのに、約束したのに)









母の願いは自由に自分に正直に生きて欲しいということ

死の間際、Aが病院へと着く前に虫の息だった母は医者に娘にそう伝えて欲しいと託していたのだという。









A(お母さんもこんな気持ちだったのかな、嫌だったのかな)

A(どうしていつもいつも…奪われなきゃいけないの)









失えるものは全て失った

いつも笑顔で抱きしめてくれた母親も

帰るべき場所も

夢中になれた野球も

全部全部、もうその手にはない。









金丸(おいおいおい、やべぇぞ…これ)

東条(雛瀬、完全に泣いてる…)







せっかく楽しい日々を送っても

どうしても思い出してしまうものなのかもしれない

そう思うと自然と静かにポロポロと涙が零れてきた。








春市(どう声をかけたらいいんだろう…肝心の栄純くんはあんな調子だし)







下を向いて声を殺しながら泣き始めたAを見て慌て始める1年生

ここは栄純に頼りたいところなのだが肝心の栄純もしどろもどろあたふたしていて駄目だ







栄純「は、春っち…これは…どうすれば？」

春市「僕も分からないよ、事情が事情だし…」

栄純「つっても…なんかほっとけねーよ」







家族のことが絡んでなければ

大丈夫！何とかなるよ！泣くなよらしくねぇ！

とかそんな言葉をかけてあげられるのだが今回ばかりは面倒な案件、言葉を選んでしまう









春市「気になってたけど、栄純くんAちゃんのお祖母さんと会ったことあるの？」

栄純「まぁ…1回だけだけど」








よくあの時にあの人相手にAを連れ出せたもんだと今なら思える

もうそれ自体がラッキー







栄純(何がやり直したい、結婚するだよ、ふざけてんのか？)

栄純(俺は絶対そんなの嫌だ)






今はただ隣で泣き続けるAの頭を撫でてやることしか出来なかった

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