じゅったんの誕生日 ページ40
【juri side】
6月15日、土曜日。
朝、目が覚めると
「………にぁ、？」
俺は猫になっていた。
ぼやける視界がやけに低い。
目を擦ろうとした手は毛むくじゃらで、可愛い肉球もついている。
物理的に有り得ない。
しかし、どう見ても猫だった。
…一体どういうことか。
記憶は昨晩に遡る。
・
・
6月14日。
仕事を終えて家に帰ると、俺はいつもの様にゲームの電源を入れた。
もうほぼ習慣になっていて、やらない日は無いとも言える。
人によって息抜きは色々あるだろうけど、俺にとってはこの時間が1番気の抜ける時間かもしれない。
…と、思っていたのだけれど
昨日はやけに集中が続かなかった。
電源を付けたままのコントローラーを置き、ベランダに出てタバコに火をつける。
なかなか背の高いマンションだから夜景が綺麗だ。
ふっと煙を吐いて、街のネオンに耽っていると
右側の隔てから突然みゃあ、と小さな鳴き声の様なものが耳に届いた。
「…みゃあ？」
俺がオウム返しをすると、すらっとした黒い前足が隔てから覗き、小顔の美人な黒猫がにゅっと上半を現した。
「へ…
…お前、どこから来た？」
右の部屋はつい最近出たばかりなので空き部屋のはずだ。角部屋なので隣の隣、ということも無い。
こんな高いところにも、猫なら登ってこられるのだろうか。
よく分からないまま顎を撫でると、猫は気持ちよさそうにごろごろと喉を鳴らす。
「…ふふ、人懐こいな」
実家で犬を飼っていたこともあり、動物の扱いには少し慣れていた。
背中から腹を撫でてやれば、ひっくり返って気持ちよさそうにみゃあみゃあと鳴く。
何となく、寂しかったのかな、と思った。
…あまり可愛がってしまうとかえって気の毒かもしれない。
「普段はどこら辺にいるんだ」
そいつには意思があるような気がして一応聞いてみた。
しかし、ふにゃふにゃしているだけだった。
と、思えば、何かを思い立ったようにしゅたっと体勢を整えて、窓をかりかりと引っ掻き始めた。
「中はダメだよ。…はぁ、しゃーねぇなぁ」
タバコの火を消し、俺は猫を抱き抱えてデッキチェアに腰掛けた。
「今晩だけだぞ。満足したらいつでも腕から出てきゃいーから。
…俺の腕の中は最高の寝心地だかんな。贅沢だなぁお前」
俺の小言をそいつは手を舐めながらフル無視して、顔を隠すように丸くなった。
そこで俺の記憶は途絶えた。
目覚めたら猫になっていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 389人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ななみや(プロフ) - ちなさん» ちなさん、いつもありがとうございます♡最年長コンビ、ほんとに可愛いですよね〜！ちょっと不安だったのですが、ラブいただけて良かったです( ´-` )ライブ、行きたいですね〜！！ (2022年11月18日 20時) (
レス) id: 79361d6db2 (このIDを非表示/違反報告)
ちな(プロフ) - ふわふわ…ほのぼの…最年長コンビ、尊いですね！！マイナスイオンです。いつも私に萌えをありがとうございます♡ラブです^_^そしてリアルもこっちもライブがんばれ！ですね！行きたいですねー…。。。 (2022年11月18日 19時) (レス) id: 83fa992d20 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：ななみや | 作成日時：2022年9月20日 0時
