50(jr×kym) ページ3
こーちから預けられた見舞いのサンドウィッチをぶら下げて、示された住所へ足を運び、チャイムを鳴らす。
｢ままぁ………？｣
扉越しに聞こえてきた、いつもより少し掠れたそいつの声。見た目とギャップのありすぎる呼び方に少し驚く。
大｢……きょもです｣
扉が開かれると同時にそう告げると｢え゛、きょも？！｣とオーバーリアクションをとって勢いよく扉を閉められた。
大｢……え、ちょっと｣
樹｢だ、だめだよ！移っちゃう！！ゲホッ…｣
思ったより酷そうだな。俺はそんな抵抗もお構い無しにドアノブを捻って家に上がり込む。
大｢寝てな。看病してやる。薬は飲んだ？サンドウィッチ預かってるから食欲あれば食べてみる？子守唄歌ってやろうか？｣
未だ状況が掴めていない、と言った表情のそいつをベッドに寝かせて、俺は質問攻めをする。
看病なんてしたことが無い。今まで強い言葉で接してきただけに、どう接すればいいのか分からない。
そんな俺の落ち着かない様子を見て、そいつはふにゃりと笑って俺の手をそっと包んできた。
樹｢じゃ、、傍に、いてほしい………、、何も、しなくていいから……｣
熱に浮かされて赤い顔を更に赤くしてそう告げられて、俺は心臓が止まりそうなくらい苦しい感覚に陥る。
慣れない空気。
緊張で気づかなかったけれど、部屋はいつもより一層濃厚な甘いそいつの匂いで包まれている。
沈黙の中、そいつの手の温もりと、浅い呼吸と、その匂いが俺の調子をどんどん狂わせる。
でも……………どうせこんな風に弱みを見せることも、慣れてるんだろ？誰にだって甘えるし、甘えさせるんだろ。
それとも………俺だけなの…………………？
なぁ、どうなんだよ…………バイト。俺には分からないよ………………。
俺は彼に包まれた手をキュッと握り返すことしか出来ないまま俯く。
すると彼は、そんな俺の身体をぐっと引き寄せた。
｢きょも………………俺のもんになって｣
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作者名：ななみや | 作成日時：2022年10月13日 22時
