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【yugo side】
この人…樹?
なんなんだろ、
多分昨日は相当酔ってて、俺を女の子だと思ったのか、家に連れ込まれて、抱かれて。
それで終わりだと思ったのに、わざわざ店まで着いてきて、着替えを終えるのをずっと待ってるかと思ったら、家まで行く、とまた着いてくる。
「あの…なんで、来るの?」
「…別に」
よく分からない。
分からないけど、多分優しい。
昨日は変なお客さんから助けてくれたし、
こんなみすぼらしい姿の俺の隣を、嫌な顔せず歩いてくれる。
「……つーかなんで草食ってんの」
「これ、朝ごはん。意外と美味いよたんぽぽ」
「…いや、食わねぇよ」
んははって、はじめて笑う顔を見た。
「煙草、食う?」
「…不味そう」
「美味いよ」
朝焼けに照らされた樹の綺麗な横顔。
煙を吐くその表情は儚げで
明るい髪が風に靡く様はまるでライオンのたてがみのように見えた。
「家族に飯食わせるためにあんなの着て、たんぽぽ食ってんの」
「言っとくけど俺の子供じゃないよ。弟3人の親代わりって感じ」
「ふーん……。てかこれ着ろよ、さみぃだろ。次会った時、返してくれれば良いから」
返すタイミングを逃していたパーカーを俺の手から取ってがばっと被せて、またんははと樹は笑う。
「…俺よりほせぇ奴、始めてみた」
変に踏み込んでこない優しさも
あっという間に取り付けられる次の約束も
慣れなくて、嬉しくて、少し苦しい。
「いろいろ、ありがと。じゃあ、また…樹」
「…おう」
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あれから1ヶ月。
家の洗濯機じゃだめだとクリーニングに出したパーカーは、部屋の片隅の紙袋の中。
携帯なんか持ってないし、口実はあっても会う手段が無い。
「…じゅり、」
パーカーを紙袋から取り出して顔を埋めると、ふわりと香る柔軟剤の中に僅かに残るメンソールが、鼻をツンとついた。
あの日の匂いと、同じ、
「……兄貴、なにやってんの?」
「わ!……ほ、北斗…!おかえり…」
尻もちを着いて振り向くと、羽虫を見るような目で弟が俺を見ていた。
「…なんでもいいけど。
それより、外に知らない車停まってた。中の男の人にちらちら見られた気がしたんだけど、知り合い?」
「……っえ、」
「黒のベンツ。」
「…見てくるよ」
「俺も行く」
「大丈夫。大我達見てて」
来るの早いよ………………父さん。
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ななみや(プロフ) - おもちさん、コメントありがとうございます!気に入って頂けて嬉しいです!!お互いに影響し合いながら振り回していく2人を見守っていただけたら嬉しいです︎︎^^更新頑張ります! (2023年4月26日 20時) (レス) id: 79361d6db2 (このIDを非表示/違反報告)
おもち(プロフ) - きょもゆごの感じ最高です!!!!両方が両方に振り回されてる所とかもう可愛くてしょうがないです!!続き楽しみにしてます!更新頑張ってください☆〜(ゝ。∂) (2023年4月25日 23時) (レス) @page35 id: 49ad13fc97 (このIDを非表示/違反報告)
ななみや(プロフ) - ぽむさん» ぽむさん、コメントありがとうございます!jrくん…ちゃんと沼に書けてるでしょうか…!とっても嬉しいです😭これからも宜しければお付き合い下さい! (2022年12月3日 12時) (レス) @page4 id: 79361d6db2 (このIDを非表示/違反報告)
ななみや(プロフ) - ちなさん» ちなさん!コメントありがとうございます♡わたしも書きながらygくんが心配になってきました…。珍しい組み合わせですが、感情ジェットコースターにして読んでいただけて嬉しいです…!笑更新頑張ります! (2022年12月3日 11時) (レス) @page2 id: 79361d6db2 (このIDを非表示/違反報告)
ぽむ(プロフ) - 新作ありがとうございます!jrくんの沼加減が好きです…これから関係がどう発展して行くのか、楽しみです! (2022年12月3日 11時) (レス) @page4 id: 6e0ba5629e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ななみや | 作成日時:2022年12月1日 23時