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「「せーの」」
僕はストックの6つの石の中から、1番綺麗なものを出した。
殺しの武器になりそうな程鋭利な角に、黒光りした表面。僕は厨二心を擽るものに目がない。
一方高地の石。
彼が両手で大切そうに包む石は…、浮世離れした美しさだった。
湧き水のように透明でありながら、所々柔らかく淡い桃色の光を放っている。
「……わ、凄い綺麗だな。でも見てよ、僕のも綺麗「いや。俺の勝ちだな」
「………ぇ、」
「どう見ても俺のが綺麗だろ」
僕はぽかんとして彼を見つめた。
どちらの方が綺麗かなんて、僕は興味がない。
たとえ輝きに差があっても、それぞれの良さを称え合えると思っていたし、高地も同じ考えだと思っていた。
僕の石をろくに見ようとせず勝ちを主張する高地は、まるで別人のようだ。
僕が何も言えずにいると、高地は慌てたように笑顔を作った。
「あはっ、なんてね。今日は大我に勝ちたい気分だったんだよ」
その夜
高地は死んだ。
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その日の午後6時頃
僕の家に数人の警察官が来て、僕はその事を知った。
________君の友人が自宅の車庫で、薬を過剰摂取して自ら命を絶った。
彼が最期に行動を共にしていたのは君だから、一応事情を聞かせて欲しい__________。
僕はその意味が理解できなくて、彼らを押し退け一目散に高地の家へ走った。
嘘だ。何故、そんな事。高地がするわけが無い。
だってさっきまであんなに楽しく笑ってふざけ合っていた。
ずっと、ずっと……お前は僕の隣で笑ってたじゃないか。
しかし僕の期待は一瞬で砕けた。
彼の住むアパートの車庫には黄色い規制線が貼られ、数台のパトカーが止まっていた。
中は青いビニールシートで覆われ、何も見えない。
僕はがくりと膝から崩れ落ちた。
僕は高地のことを、なにも。
連れられた警察署で僕は放心状態で取調を受け、あっさりと開放された。
学校をサボって海に行っているような奴に、割く時間などないんだろう。
死因は薬 物中毒と判断され、小さく新聞に載った。コロナ鬱か、なんていい加減なキャプションと共に。
世の情勢的に葬儀は行われなかった。
かわりに彼の机には暫く沢山の花が手向けられていた。
僕はそれを見るとあの桜のあとを思い出した。
青春を思い切り謳歌した、最後の日を。
……北斗は、ちゃんと呼吸ができているだろうか。
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作者名：ななみや | 作成日時：2023年7月9日 18時
