桜のあと (ページ27)

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北斗は独り言のように話し始めた。

大好きな幼馴染が、ある日突然死んでしまったこと。

北斗が遺体の第1発見者であったことから、家族ぐるみの付き合いだった幼馴染の両親に責め立てられ、妙な疑いをかけ続けられたこと。

何度も死のうとして、幼馴染が最期に居た薄暗い倉庫に通っていたこと。

……ある人が浮かんで、死にきれなかったこと。

諦めるような口調で語られる話の一つ一つが、余りにも重かった。

樹は適当に聞いている素振りをしていたけれど、本当は涙を堪えるのに必死だった。

同じ歳の青年が1人で抱えてきたことを、適当に生きてきた俺が泣きながら聞いていい訳がない。

「…ふふっ、ねぇ、そのタトゥーと銀髪、もう全然怖く見えないんだけど。…樹、泣いてるでしょ」

「…泣いてねぇよ」

よしよし、と子供をあやすように北斗は樹の頭を撫でた。

「…樹、今更なんだけどさ。俺と友達になってくれない？」

「…会った時から友達だわ」

「えぇ〜…ほんとにかっこいいわお前」

北斗にとって樹は、大学で初めてできた友達だったらしい。

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北斗と俺は、互いに全く混じり合わないようなタイプに思えたけど、案外相性が良いらしかった。

お互い話したい話をし、適当に飯を食い、制作をこなす。
他愛のない日常が心地よかった。

北斗は初めて俺と会った時、話すはずじゃ無かったことを沢山話したと言っていたが、俺もそうだ。

北斗にはどうでもいいことも、大事なことも、同じテンションでさらっと話してしまう気がする。

…まぁ、北斗はいつも、大体同じ話をしていたけど。

「ねぇ、きょ…樹」

「今京本って言いかけたろ」

「…ごめん、頭で京本のこと考えてた」

…と、いつもそんな調子で。

「…北斗は、京本サンのことどー思ってんの」

制作中軽食をとっていた時、俺が何気なく聞くと、北斗は唇をきゅっと噤んで考え込んだ。

「…暗い所に居る時、あの人がいると怖くない。あの人は…昔からずっと優しくて眩しい、憧れの人、だよ」

その感情の行き着く先がなんなのか
俺も、きっと北斗も気づいていた。

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