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「…て、ことがあってさ」
北斗と会ってさっそくジェシーの話をすると、彼はんははっ、と堪えきれなかったように笑いだした。
「…何がおかしいんだよ」
「だって…陽キャに絡まれてわたわたしてる京本さん想像したらなんか面白くて」
「僕は凛としてたぞ。そーゆー北斗はどうなんだよ。僕と初対面の時でさえおろおろしてたくせに」
僕が詰め寄ると北斗はきゅっと口を噤んで難しい顔をした。
…ブーメラン。かわいい。
「な…なんていうか、京本さんは敷居が高いんだよ。初対面からそういう風に行けるのなんて、そのジェシーって人とアイツくらいでしょ」
「あー…確かに。アイツは最初っから図々しかったな」
御曹司だのと遠巻きにされがちだった僕に対しても、高地は態度を変えなかった。
「ふふっ…でも不思議と嫌じゃない、でしょ」
「うん…そうだな」
ジェシーと話した時、懐かしい感じがしたのはそういう訳か。
「…ねぇ、京本さん」
「うん？」
過去を思い出してしんみりしていた僕に、北斗はむっすりした顔を向けた。
「…俺だって、最近友達できたよ」
「ぶふっ…何張り合ってんだよ。どんな人？」
「んー…同じ大学で、酒と煙草と女が主食」
「これまた…北斗と全然タイプ違うね」
「そう、全然違う。…でも、京本さんと会うようになったからなのかな。自然と会話できるんだよね」
北斗の穏やかな表情から、その友人に心を許しているのが読み取れた。
「…そっか。よかったね」
僕は少し、安心した。
僕の止まっていた時間は、彼と再会したことでまたゆっくりと動き始めた。
…もしかしたら、彼もそうなのかもしれない。
僕らが進むことによって
周りを取り巻く環境が少しずつ変化していく。
過去はどんどん、過去になる。
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作者名：ななみや | 作成日時：2023年7月9日 18時
