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春が去り、暑く湿った夏が来た。
陽炎が揺れ
強い日差しがじりじりと肌を焼く中、僕と彼は少し距離を置いて川べりを歩いている。
「…今日、暑いですね」
「うん…少し日陰で休もうか」
熱中症にでもなったら大変だ。
僕の前を歩く彼は、服の首元をぱたぱたと扇ぎながら頷いた。
彼と再会して約1ヶ月
僕らはそれぞれの授業に空きができると、こうして散歩をするようになった。
最初は食事がメインで、店で会うことがほとんどだったが
ある日食後に2人で散歩をした時、思いのほか心地良い時間を過ごせたことから、いつからか会う日は歩くことが目的になっていた。
「…京本さんって、日焼けを知らない肌してますよね」
橋梁下のコンクリートに並んで座ると、彼が僕の腕を取って言う。
「…いや、今年は去年より出歩いているから、これでも少し焼けた方だよ」
「ほんとに？真っ白だけどなぁ」
彼はふふ、と楽しそうに笑う。
僕らはいつも少し距離があるけど、たまにこうして彼が隣に並び、フランクな表情を見せる瞬間が僕は好きだ。
「松村くんは、日焼けしやすいのかな」
少し赤くなった彼の頬を見て言うと、彼はしゅっと表情を硬くして僕の顔を見返した。
「……あの、俺ずっと思ってたんですけど。前からその呼び方でしたっけ」
「ん？」
「…松村くん、じゃなくて」
彼はごにょごにょと何かを口篭る。
言わんとしていることはわかるけど。
「…それじゃあ、松村くんはどうして僕に対して敬語を使うの？僕ら同い年だよね？」
「……それは、京本さんの気品に見合った言葉遣いをしているだけです」
「ふふっ、なんだそれ」
僕が笑うと、彼は口を噤んで視線を彷徨わせる。
「北斗。僕は君と対等な友達になりたいんだけど、ダメかな」
「あ…、俺も…ダメじゃないです。…あ、いや、ダメじゃない、よ、」
「ふははっ、不自然だなぁ」
「……ごめんなさい、慣れなくて」
彼は深く反省したように項垂れてしまったので、僕はぽんぽんと軽く肩を叩いた。
「…じゃあ、お近づきの記念に。綺麗な石でも探そっか」
「石……？」
きょとんとした表情の彼に、うん、と僕は微笑みかけた。
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作者名：ななみや | 作成日時：2023年7月9日 18時
