桜のあと (ページ2)

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季節は春の終わり

一日の授業を全て終え、特に予定もないので
小さな旅に出ようと
僕はあてもなく電車に乗りこんだ。

車窓を流れる東京の街並みを、電車に揺られてぼんやりと眺める。

空には分厚い雲がかかり、今にも雨が降り出しそうだった。

東京に越してきて2年

大学生2年目を迎えた。

友達は片手で数える程しか居らず、まぁそれで良いと思っているので良いのだが

大学生らしい生活をしているかと言えば、普通とはだいぶかけ離れているかも知れないと思う。

17の春…あのころは、青春だった。

彼の存在そのものが、僕にとっての青春だった。

……彼がいたら、僕は今頃どうしていただろうか。

電車のアナウンスに聞きなれない地名が増えた。

間もなく降りようかと、足の間に挟んでいたトートバッグを肩にかける。

「あの…すみません」

その時、突然声をかけられた。

低く透明な、どこかで聞いたような青年の声。

「……京本さん…ですよね」

彼の姿をみて、僕は目を見張った。

繊細そうに揺れる瞳、すっと通った鼻筋、薄い唇。

どれもよく知っていて、懐かしい。

「…松村くん」

少し迷って呼んだ名前に、彼は小さく笑った。

外はしとしとと雨が降り始めていた。

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