File.18-79 ページ40
背後から小走りに駆けて来た少年が隣に並ぶのと同時に、再び全員が揃う広間へ辿り着く。
「それは私が証人になります!」
それと同時に奥の方、ソファセットから鈴木会長のはっきりとした声が響いてきた。内容からして西野さんの羽毛アレルギーの件に関する事らしい。
「彼は少しでも羽毛があると、くしゃみが止まらなくなるんです」
穏やかでありながら堂々とした会長の其を聞きながら、同じセットの空いたソファに腰を下ろす。それと同時に室内に響いたのは、隣に座ってきた少年の「そっか!」なんて明るい幼声。
「だから西野さんの枕は羽毛じゃないんだね!」
先程触っていた枕は羽毛が詰められたものでは無かったのだろう。パイプか籾殻かウレタンかファイバーか。兎も角、今此処では何だって良いのだけど。
「そっか!西野さんが蘭の部屋から逃げるように出て行ったのは...鳩がいたからなんだ!」
漸く納得した、と言う様に叫んだ園ちゃん。彼女の晴れた理解は兎も角として、西野さんを部屋に招くとは何とも大胆、なのか将亦何も考えていないのか。とまあ、それすら如何でも良い。
彼の銀鳩がきちんと保護してもらっているのは有り難い。蘭ちゃんに可愛がられている、というのは心の片隅が燻る気がするが。
それが如何してなのかは、分からない。
「となると、犯人は一体...」
「警部さん、スコーピオンって知ってる?」
すっかり振り出しに戻って了ったらしい捜査に頭を悩ませる目暮警部へと、唐突に質問を投げ掛けた少年に「スコーピオン?」と本当に知らないのか忘れたのか、濁りの無い疑問符が返ってきた。突拍子が無い訳でも撹乱させてる訳でも無く、核心に迫る言葉にも警部や毛利探偵の反応は薄い。
「色んな国でロマノフ王朝の財宝を専門に盗み...いつも相手の右目を撃って殺してる、悪い人だよ!」
「そう言えば、そんな強盗が国際手配されておったな...」
少年がそこまでお膳立てしても、反応は相変わらず惘と。
本当に大丈夫かな、なんて日本警察に対して不安感さえ覚える中。唐突に「それじゃ今回の犯人も!?」と目暮警部の驚愕とした声が室内に響き渡った。
「そのスコーピオンだと思うよ。多分、キッドを撃ったのも...」
警部の吃驚した声よりも、少年の静かに紡がれた声の方が何倍も鼓膜を震わせた気がしたのは屹度。
気の所為では無いのだろう。
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作者名:雪兎。 | 作成日時:2024年3月23日 21時