File.18-78 ページ39
けど、の後に続く言葉なんて大体決まっている。
「白鳥刑事にバレてねぇよな...?」
大した事でも無ければ重要な事でも無い。
真剣な表情で何を言い出すのかと思えば、何故そうなるんだか。そもそも白鳥警部補では無い上に、彼に変装している紳士には残念ながらバレている。君の、というより博士の大失態で。
「なんだ、てっきり蘭ちゃんの方心配してるのかと思ってた」
「は...何で蘭なんだよ?」
なるほど、大失態なのはこの子の方らしい。
きょとんとして此方を見上げる少年に、本気か?なんて思うものの、此処で私が何かを言ったところで彼が変わるとも考え難い。彼は自分が小学生に退行したとしても、懲りる事な無く探偵業に手を出しているのだから。
時折、蘭ちゃんが少年へ疑いの眼差しを向けている事なんて、この子どもが気付いてる訳無い。
「...、.....まあ良いや、かわいい子には旅をさせよ...ってね」
「.....はぁ?」
ひらりと手を振って、相変わらず不思議そうな顔をしている少年を残して部屋を出る。廊下には既に人影は無く、水色スーツの彼すら見当たらない。男の子なだけあって体力や素早さは私なんかより上だ。
「ほら行くよ、おチビさん」
閉まりかけた扉の隙間から声を掛けながら、一人先に廊下を進んでインカムを二度小突く。爪の先で軽い音を鳴らして小さく笑ってみせて、
「あんまり虐めないでくれる?私の仕事が増えるから」
数十m先に居るだろう誰かさんを咎めておく。
が、周囲に人がいる所為か反論も謝罪も返る事は無く、唯々微かに不機嫌そうな咳払いが戻ってくるだけ。
誰も彼も何なんだか。
少年と言い彼と言い、一体何を考えているのか分からない。それが彼等の思考回路が難解なのか、将亦私が人間の感情やら思考を理解出来ていないだけか。
慣れてきた心算でも、矢張り人の心とは難しい。
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作者名:雪兎。 | 作成日時:2024年3月23日 21時