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File.18-77 ページ38

「何っ!?」



正面から否定して見せた少年に、疑問なのか疑惑なのか、兎も角として声を上げたのは勿論毛利探偵。ちょろちょろと室内を物色する小学生を叱責しようとしてか、振り上げられていた拳は少年の反射神経と毛利探偵の驚愕によって空を切る。



「.....」



と、そんな事より。



堂々と西野さんの無罪を投げ付けた少年、というより先程の電話の所為で人知れず此方に露呈した少年の正体を思ってか、白鳥警部補が鋭い視線を小学生へと向ける。彼に至っては隠す気等無いのかも知れない。



「え...っ」



少年とて唯の小学生では無い所為で、大人の射貫く様な視線にも敏感だ。素早く其に反応した少年は、吃驚なのか不思議さからか声を漏らして白鳥警部補へと目を向ける。が、当然その程度で狼狽える様な紳士では無い気障な男は、小さく不敵に笑って見せて「良いから続けて」なんて返す始末。



若しかすると、本当に隠す心算等無いのだろうか。



「う、うん...。だってほら、寒川さんの部屋羽毛だらけだったじゃない。犯人は枕まで切り裂いてたし...羽毛アレルギーの人があんな事する筈ないよ!」



此方の少年は、まあいつも通りだけど。



「本当に羽毛アレルギーなのかね?」



「は、はい...」



相変わらず正直で素直な西野さんが戸惑いながら目暮警部へと頷くが、その隣では矢張りというか毛利探偵が疑念の眼差しを向けている。西野さんに何らかの恨みでもある訳も無いだろうに、アレルギーよりもボールペンという物的証拠の様な其の方が価値が高いのだろう。



全く世話の焼ける大人ばかりだ。



「今ここで検査しましょう、なんて訳にはいかないので...。そうですね、雇用主の鈴木会長なら真偽をご存知かと」



西野さんの背後から顔を出して目暮警部へと提案してみせれば、変わらず真面目な警部が「では一度戻ろうか」と頷いて部屋を後にしていく。此方も相変わらず戸惑いを隠せない西野さんへ「行きましょう?」なんて廊下へと促して、綺麗に整理されている室内を振り返る。



「もしかして今日調子悪い?」



先程の枕をベッドに戻し終えても尚、寝台の隣から動かず何やら考え込む様に顎へ手を添えた少年だけが残された部屋。閉めずに開かれた儘の扉を挟んだ廊下に人の気配を感じつつ、構わず問い掛ける。屹度少年は、彼には気付いていない。



「いや...そういう訳じゃねえんだけど」



然う言った小学生の表情は、何かを考える時の見慣れた顔。






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作者名:雪兎。 | 作成日時:2024年3月23日 21時

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