File.18-75 ページ36
あと少しで先程まで賑わせていた広間に辿り着く、というところ。
「おお!蛍くんにコナンくん、今から西野さんの部屋を見せてもらうところなんだが一緒にどうかね?」
廊下を曲がった先の其処に居たのは、目暮警部に白鳥警部補、高木巡査部長と毛利探偵に西野さんという組み合わせ。寒川さんを射殺した拳銃か、無くなった指輪を探す為か。兎に角この面々で西野さんが使用している部屋を見に行こうという事らしいが、どうかね?とは何なんだか。行った方が良いのか、それとも断るべきか。
「あー...まあ、えっと.....はい、ぜひ?」
さあ、如何答えるべきかと考えながら曖昧に声というより音に近い其を漏らしていれば、早々に「そうかそうか!」と嬉しそうな顔を見せた目暮警部によって半ば無理矢理身体を回され、背を押される。咄嗟に掴んだ小学生の後ろ襟を引っ張りながら足を運び、斜め下から「ぅえ...っ」なんて聞こえてくる声を一先ず無視しておく。
それにしても、警部は如何してこんなに嬉しそうなんだか。
「とっ、ころで...目暮警部、銃を所持した殺人犯がいるかも知れない船の中で、エッグは無事ですか?」
小さい頃から誰かさんに連れ出されて振り回されている所為で、すっかり近所の子どもか親戚の子くらいの距離感なのか、女子高生の肩を押して進む目暮警部を振り返りつつ訊ねてみる。その話題の拍子に離れた警部の手からするりと抜け出し、隣へ並びながら掴みっぱなしだった少年の襟を離した。
至極不機嫌な視線を感じるが、こういう時は無視に限る。
「それなら心配ない。金庫のセキュリティを見せてもらったが、あれは拳銃でどうにかなる代物ではないとの事だ」
「そうなんですね、安心しました」
口振りからして警備が張り付いているようでは無いらしい。
機械に頼ったセキュリティである上に、数人の警察官しかいない船上となると、目を開けずとも奪取は容易い。まあ盗むのは私では無いのだけど。
この場において殺人犯以外を警戒していないとは、怪盗キッドは死んだと思われているのか将亦捜査一課ならではの思考か。エッグをキッドに盗まれるだなんて考えていないのかも知れないが、怪盗紳士より殺人犯の方が危険なのは確か。
怪盗より強盗殺人を優先して貰う分には非常に有り難い。
が、
「.....」
満面の笑みを警部へ返す私へ、険し過ぎる半眼の視線を突き刺してくる少年だけは然うもいかないらしい。
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作者名:雪兎。 | 作成日時:2024年3月23日 21時