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File.18-68 ページ29

世間話にもならない世間話を交わしながら歩く事数分。



漸く辿り着いた広間は幾つかのソファセットで区画を分けており、鈴木親子と西野さんに蘭ちゃん、他の面々といった形で分かれて座っている。



ぞろぞろと警察を先頭に室内へと入って来た私達へ一斉に向けられた視線は、私達、というより前を行く毛利探偵や警部達へと注がれていて此方を気にする者はいない。目暮警部や毛利探偵が口を開くより早く、蘭ちゃん達が座るソファセットの中で空いている其処に腰を下ろせば、隣のスペースに少年が座ってくる。



「ちょっと蛍、コナン君ったら危なっかしいんだから、あんまり連れ回さないでよ?」



「...んあー.....ごめんごめん、この子の発想が興味深くて、つい...」



座ると同時に降り掛かってくる蘭ちゃんの叱責の声に、若干やる気のない音が出たが、直ぐに苦笑を添えて軽く謝罪を送り返しておく。別に少年を引き留めた心算も振り回した気もしていないが、彼女からしたら、事件現場に良く首を突っ込む女が預かりの少年を連れ立って今回も殺人現場に乗り込んだ、ようにしか見えないのは仕方無い。



そもそも、今まで好き好んで自分から事件に足を踏み入れた試しは無いのだけど。



苦笑いと共に手を合わせて謝罪してみせれば、僅かな不機嫌を見せつつ「もう、蛍もあのホームズオタクに似たんだから」と呆れた様に溜息を吐かれる。あの名探偵に似たとは失礼極まりない不名誉だが、乾いた笑い声を漏らして流した方が楽だ。へらりと笑って誤魔化して視線を逸らし、隣にある面積の小さい頬を抓っておく。



気を遣ってか、自分の為でもあるからか、声を出さず頬を引っ張られてくれている幼馴染に感謝する事は忘れない。



「警視庁捜査一課の目暮です。皆さん、映像作家の寒川竜さんが何者かに射殺された件はご存知だと思います。そこで、皆さんからお話しを伺いたいのですが...」



漸くと殺人現場に関して、と口を開いて丁寧な説明を始めた目暮警部は、其処で一度言葉を切ってから手にしていたボールペンを取り出して、鈴木会長秘書である西野さんへと目を向ける。



「このボールペンは、寒川さんの室内に落ちていたものです。西野さん...あなたの物に間違いありませんか?」



「は、はい...」



相変わらず優しい対応の目暮警部の問い掛けに、戸惑いながらも頷く西野さん。



その表情に焦りや恐怖は無く、浮かぶのは困惑だけ。



本当に分からない、といった色。






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作者名:雪兎。 | 作成日時:2024年3月23日 21時

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