File.18-63 ページ24
うりうりと小さくも誰より中身の詰まった頭を撫で付けていた時、バタバタという成人男性数人分の足音が廊下の向こうから聞こえてきて立ち上がる。
視線を投げた先の其処には、毛利探偵と目暮警部に、若い爽やかそうな刑事と堅そうで真面目な印象の刑事。毛利探偵が言っていた白鳥警部補と高木巡査部長、というのは彼等だろうが、誰かさんが小学一年生にまで退行した所為で事件現場に居合わせる機会が減って初対面だ。
「おぉー！蛍君じゃないか！」
「お久しぶりです、目暮警部」
この三人の中の誰かがキッドか、と目を向けた矢先に、近付いてきた面々の中で目暮警部が嬉しそうに声を上げた。この雰囲気と、つくらなければならない体型からして目暮警部は本物だろうなと思いながら笑顔で挨拶を返していれば、間近まで足を運んで来た警部が肩に置いた手でバシバシと叩いてくる。
以前から親戚のおじさん、の様な接し方をしてくるこの警部。
工藤新一に連れ回されては振り回される私を如何思っているのかは分からないが、ある程度好意的なのだろう事は会う度に感じている。が、今日だけは止めて欲しい。自分の力の強さを知らないのか会えた喜びが勝るのかは知らないが、節々に響いてくる所為で笑顔が引き攣りそうで気が張る。
「工藤君は一緒じゃないのかね？君が事件を嗅ぎ付けるとは珍しい」
「まあ...私も好きで殺人事件に居合わせてる訳では無いので...」
漸く収まった強めの肩叩きに苦笑しつつ「嗅覚鮫男と一緒にしないでください」と添えた瞬間、微かな不機嫌さを漂わせた雰囲気が生まれると同時に隣に立つ少年が足許目掛けて勢い良く踵を踏み下ろす。それを極小さく足をずらして避け、間近の警部すら気付かない其へ微かに視線を寄越した白鳥警部補にすっと細まりかけた双眸に再び笑顔を乗せて、警部へ首を傾げておく。
「あんなシャーロキアンの事より、現場をお見せしても？」
少年の怒気も、足許の遣り取りも。微かな其等を察することが出来るのは警察としての勘が成すものか、其れとも彼が唯の刑事では無いからか。白鳥警部補自体に会った事が無い所為で、本当に察しが良い可能性もある。それに加えて優しそうでへらりとした雰囲気の高木巡査部長の方が、彼の雰囲気的には似ている。
恰幅が良く「おお、すまんな」なんて言ってくる目暮警部は明らかに本人だろうけど。
密かに始まった彼とのかくれんぼは、既に二択。
本命は、勘の良い彼。
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作者名：雪兎。 | 作成日時：2024年3月23日 21時
