File.18-62 ページ23
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流石は鈴木財閥。
というより、警察として当然の動きなのかも知れないが、態々ヘリコプターを飛ばして大海原を漂う船まで来て下さるという。
毛利探偵曰く、目暮警部と白鳥警部補、高木巡査部長が警視庁ヘリで来るとかで、毛利探偵は出迎えにと船舶ヘリポートまで迎えに行ってしまった。ホテルのリビングの様な待合ホールに集められた乗客達を余所に、寒川さんの部屋前で壁に凭れて欠伸を漏らして数分。同じく現場で警察を待っている少年が、顎に右手を宛てて悩んでいる。
三人の内、誰に成り済まして来るかは分からないが、彼が来るなら不要かとインカムを外してポケットへ仕舞う。
事件に全力投球の少年は、此方を警戒すらしていない。
「指輪が目当ての強盗殺人なら、あそこまで部屋を荒らす必要なんてあると思うか？」
「私なら死体の頚から外して逃げるけど...指輪が無くて探す必要があったか、本当の狙いの品が別にあるんだとしたら、或いは」
ふう、と息を吐いて真剣に悩む少年は声に返す。小学一年生を受け止めた所為で悲鳴を上げた肩と左側胸部を擦りながら、再び部屋の扉を開けて中を覗き込む彼の背を眺めるが、如何やら室内に入る心算は無いらしく直ぐにドアを閉めて此方へ視線を寄越してくる。
「なあ、キッドも右眼を...、.....って、顔色悪ぃぞ」
訊ねようとしてきた事の先が向けられるより先に、僅かに眉を寄せた少年が数歩歩み寄ってきて真っ直ぐに見上げてくるから、相変わらず心配性の優しい探偵さんだと苦笑すら零れた。屹度彼は捕まえてやろう、なんて頭の片隅にしか考えていないのかも知れない。
「顔も性格も全く違うけど...あの遺体に重なるというか、過ぎって気分悪いだけ。あと君が突っ込んできた所為で色んなとこが痛い」
「...それは、マジで悪い.....」
投げられた被害者である上に、意図した其では無いのに謝罪してくるとは、そんなに良くない顔色なのだろうか。それとも私が不機嫌だとでも思われているのか。
「なぁに？素直すぎて怖いんだけど、何を企んでるのかなぁ」
態と声を間延びさせて、膝を折って屈み視線を合わせる。折った膝に頬杖を付いて笑みを贈れば、口を尖らせながら「うっせ...」と小さく返ってくる。
「んなもんねぇよ...それに、幼馴染の心配しちゃ悪ぃかよ」
「...わぁお、感動しちゃうじゃん」
すっかり小さくなった頭を掻き回す様に撫でても、彼は怒らない。
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作者名：雪兎。 | 作成日時：2024年3月23日 21時
