File.18-61 ページ22
走って行った彼等を追い掛けた先。
鈴木会長と園ちゃんが待つ部屋の前に駆け付けた毛利探偵達の合間から覗いた室内は、口を開けた引き出しからは荷物が吐き出され、書類は散乱して花瓶は割られ、ベッドは乱れ倒して羽毛枕は切り裂かれた正に惨状。
その床に仰向けで口を開いた儘倒れている寒川さんは、右眼から血を流し顔を赤く汚している。
「寒川さん...」
あまりの荒れ様に小さく呟いた毛利探偵を余所に、死んでいると思われる彼に近付いて冷静にも観察を始める少年。真っ先に死因となっただろう右眼の弾創に目を付けた彼を遠巻きに眺めつつ、室内を見回していれば室内へと足を踏み入れた毛利探偵が少年の襟首を掴んで猫の様に持ち上げて、
「コラァ!ガキは引っ込んでろ!」
そのまま片腕で少年を、部屋扉の方へと放り投げてくる。
「.....いっ、た...」
ドア付近で眺めていた所為で此方に飛んで来た少年をキャッチして抱えながら、思わず零れた声は少年にしか届いていない。何も考えず反射で受け止めたは良いが、思い切りぶつかってきた人間の衝撃に詰まった息を吐き出して、腕の中で不貞腐れた様に室内を睨みつつ「ちぇ...」なんて零す少年を抱き上げた儘室内へ踏み込む。
「右眼に一発と...ペンダントが無くなってますね」
「ああ、頬の硬直が始まったばかりのところを見ると大体死後30分...、.....って、だからガキの出番じゃねえんだよ!」
小学生を抱き抱えた女子高生に真っ当な事を言いながら声を張り上げる元刑事は立ち上がり、廊下を指差しながら「捜査の邪魔だから出てろ!」とまたしても正論を投げ付けてくる。そんな探偵に、肩を竦めてみせて。
「捜査の為に警察へ連絡した方が良いかと。それまでは現場保存という事で、お酒を嗜まれている毛利さんも私達と一緒に待ちませんか?」
貼り付けた満面の笑みに、訪れた静寂は何秒だっただろう。
なぜだかたじろぎながら「あ、ああ...」と詰まりながら同意の声を漏らした毛利探偵の後に続いて部屋を出て少年を降ろす。背後で扉を閉めた毛利探偵が、何かを切り替えるように咳払いを落とした。
「鈴木会長、これは殺人事件です。警察に連絡を」
「は、はい...」
絶妙に居心地の悪そうな雰囲気が漂う中、明らかに不機嫌なのは私だけ。
.
34人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:雪兎。 | 作成日時:2024年3月23日 21時