File.18-42 ページ3
「警部さんは本物だって言ってたけど...?」
何でそんな事を聞くんだ、とでも言いた気な園ちゃんの声を聞きながら、彼女同様に不思議そうな表情をつくって振り返る。彼女の返答に対してやや悩まし気な顔を見せつつ「ふーん...」なんて曖昧な声を零してコピー用紙へと視線を落とした少年は、何がそんなに納得いかないのやら。
「何か気になるの?」
あまりパッとしない反応を滲ませる少年に、何だ何だと思わず質問しながら例のコピー用紙を上から覗き込んでみる。
カラー印刷されたらしい其は、相変わらずの可愛らしいデザインで不思議の国の少女のシルエットが描かれているのが見て取れる。
「.....」
が、そんな見慣れたデザインよりも、何かを言いたそうに睨み上げてくる少年の圧の方が何倍も気になる。取り敢えずにっこりと笑顔を返して数秒、如何やら諦めたらしい少年はコピー用紙へと目を戻した。
「だってこれ、予告状っていうより.....」
「報復状...って感じだね」
言いかけて言葉を選んでいた少年の其を受け取って、リボンを結んで送り返す。意味有り気な視線を横目に寄越してくる少年へ、変わらぬ笑顔で首を傾げるも、矢張り彼から明確な言葉が返ってくる事は無い。
「報復って、キッドが狙われたから...?」
何処か不安そう、というより何かを心配した様な表情を浮かべて呟いた蘭ちゃんの声に服部くんがコピー用紙を見詰めた儘、杖を持たない手を顎へ当てつつ「つまり、や...」とやや神妙な色を滲ませて、
「コイツはキッドを襲った奴が誰なんか知っとる、って事やな」
だなんて面白い事を言う。
知ってるか知らないかで言うと、知らない。知っているが誰なのかは知らない、なんていう状況を打開する為に少年を使おうとしている、とは思いもしないのだろう。
「だったら美術館じゃなくて、直接その人に渡せば良いんじゃない?」
ごく自然に首を傾げながら「宛名も書いてないみたいだし」と付け加えてみせれば、服部くんは再び思案する様に小さく呻吟を漏らして印刷紙と睨み合いを始めてしまう。
そんなに難しい事では無いのだけど、なんて考えていれば、
「案外、本当に仕返ししたいだけかも知れないね。アリスってキッドの事になると単純みたいだし」
何とも失礼、というより事実に近い推察が少年から紡がれて、乾いた笑みだけが零れ落ちた。
だから然う言ったのに、嫌味と共に返ってくるとは複雑でしかない。
.
34人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:雪兎。 | 作成日時:2024年3月23日 21時