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File.18-58 ページ19

「美人に挟まれて何やってんの?」



夏美さんと研究家を左右に置いて甲板へとやって来た少年は、成人男性席に案内されて笑顔で其処へ座る美女二人を余所に、何故か隣の私が座るテーブルセットの椅子へ腰を下ろしてくる。そんな少年へ誰も意識を向けていないのを良い事に、揶揄う様に声を掛ければ、不機嫌でしかない視線が返ってくる。



「蘭達とお茶した流れで、夏美さん達と一緒に出て来ただけだよ」



「どう転んでも女の子に囲まれてるじゃん」



見た目が小学生だと、女子高生と成人女性に囲まれたお茶会もあるのだろう。いや、そんなものが普通なのかも分からないが、中身が高校生である上に大人とのコミュニケーション能力がずば抜けている所為で馴染むのかも知れない。



勿論床に着かない足をパタパタと振りながら隣のテーブルへ目を向けた少年は、次いで此方へ視線を戻して首を傾げてくる。



「オメーは何やってんだよ?おっちゃん達と世間話する訳もねぇし」



「...それ、私への嫌味?それとも毛利さん達を貶してる?」



純粋な疑問らしい表情だが、私が毛利探偵達と世間話なんかしない、という推測は何処の如何言う理由から辿り着いたのやら。そんな私の返した疑問符へ若干の悪戯か、大きく丸い双眸を細めてみせて「ああいうタイプと馴れ合う質じゃねぇだろ」なんて、何方にも失礼な言葉を吐き出してくるのだから、笑って流すしかない。



「ここで呑気にケーキ食べてたら、あの人達が来ただけ」



まあ彼が失礼なのは今に始まった事では無いので良いとして、今此処で嘘を吐く意味も無いので一先ず事実を口にする。



が、



「隠れてコソコソ誰かと話してたんじゃねーのかよ」



事実の更に先の真実へ踏み込んでくるのだから困ったものだ。



にっこりと変わらぬ笑顔を浮かべながらテーブルへ頬杖を付いて、遠慮無く立ち入ってくる少年へ「だったら何?」なんて否定もせずに首を傾げてみせる。そんな反応にも慣れたものか、小さく鼻を鳴らしてくる姿は、明らかに小学生の其とは掛け離れていて違和感しか運んでこない。



「何企んでるかは知らねぇが、今回は誰かの罪とやらを狙ってるみてぇだし見逃してやっても良いぜ?」



「わぁお、心が広くて泣いちゃーう」



付いた頬杖を其の儘に、棒読みを潮風に乗せる。



険悪というより仲が良い様にしか映らない会話だが、この少年は本当に私を捕まえる気はあるのだろうか。






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作者名:雪兎。 | 作成日時:2024年3月23日 21時

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