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File.18-41 ページ2

自分が怪我人である事を本当に忘れていたのか、叱る様な色を濃く乗せた遠山さんの声に「あっ...」なんて漏らす服部くんと、呆れた様な表情を見せる彼女へ苦笑する。



「まあまあ...それだけ元気だって証拠なんだし、ね?」



「ちゃうちゃう、平次がアホなだけやねん」



折角のフォローも一蹴されては、最早笑うしかない。遠山さんの返答に「アホで悪かったなぁ」と不貞腐れた様に呟く辺り、彼も少なからず無茶を言った自覚はあるらしい。



まあ、私としては探偵と名のつく人物は少ない方が良い。



この小さな探偵くんならスコーピオンとかいう強盗殺人犯を見つけ出す事は出来るだろうから、他の探偵がいては自分の首を絞めかねない。なんて考えていれば、園ちゃんから「そうだ!」と一際大きな声が上がった。



「今朝、うちの美術館に予告状が届いたのよ!」



「予告状、って...もしかしてキッド?」



怪盗キッドは狙撃されて消息不明、という扱いだと言う事もあり、キッドからの予告状かも知れないという生存の証拠に目を輝かせて園ちゃんへ一歩近付いて詰め寄る。



勿論、



「違うわよ...キッド様じゃなくてアリスよ、アリス」



私が出したのだからキッドな訳が無い。



「本物は中森警部が持って行ったけど、ちゃんとコピー取ってるわよ」



得意気にそう言った園ちゃんが取り出したコピー用紙は畳まれており、差し出された其を受け取って広げれば、数時間前に打ち出した文面と久し振りにもならない再会を果たす。



特に感情も感想も無く数秒。



内容が気になるのか、背後から覗いてくる服部くんと遠山さん、蘭ちゃんを余所に「キッドじゃないなら興味ない」と其を後ろにいる誰かへ向けて差し出す。直ぐ様すっと手許から消え去ったコピー用紙の行方にも興味等無く、呆れ顔の園ちゃんへ肩を竦めてみせる。



「アンタって、ほんっと清々しい性格してるわよね」



「ミーハーじゃなくて本気だもん」



背後でコピー用紙を覗き見たり、背伸びする少年へ紙を渡してあげたりという遣り取りを聞き流しながら頬を膨らませてみせれば「はいはい」なんて適当に遣り過ごす様に手が振られる。



「ねえ、これって本当にアリスからの予告状だったの?」



そんな幼馴染とのいつも通りの遣り取りのなか、背後から上がった声は高い子どものもの。



その意図は何処にあるのやら。



面白い事を聞くものだ。






.

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作者名:雪兎。 | 作成日時:2024年3月23日 21時

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