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𓂃 𓈒𓏸*⋆ஐ
甘橙の空に浮かぶ檸檬
世紀末を飾る酢橘の涙
黄金の卵より雛が孵る時
真実を映す左眼より
血塗れの腕に然と抱いた
罪を頂きに参ります
Carroll Notes
若い、というのは素晴らしいと思わずにはいられない。
未明の内にホテルを抜け出し、鈴木近代美術館へ白い封筒に収めた予告状を送り付けて鈴木家が今回の大阪旅行用に予約を入れてくれていたホテルへ移る。そして其の儘一睡する時間も無くシャワーと着替えを済ませて、再び波止場を訪れるという過密スケジュールを熟した事は褒めて欲しいが、残念ながら此の忙しさを知るのは快斗しかいない。
「凄い豪華客船！」
まだ午前中の陽を存分に浴びても、積もりに積もった睡魔は晴れない。港に停泊中の大き過ぎる豪華客船を見上げながら隣で明るい声を上げる蘭ちゃんを見ても、欠伸が零れるばかり。
何故こんな時間にこんな場所に、なんて疑問が浮かんでは直ぐ様答えが過ぎる。本来なら今日から鈴木近代美術館でメモリーズ･エッグを展示する予定だったが、昨夜エッグを盗み出したキッドが狙撃された所為でエッグが地面に突進した挙句、収められていた桐箱が砕けるという悲劇を迎えた事で展示は中止。エッグに傷が付いていないかを調べる為に東京へ持ち帰る運びとなり、何故だか船で東京へ戻るのだという。
20時間程度掛かるだろう海路を選択したのは、一体誰なんだか。
「ホンマ！こんなん乗れたら素敵やな」
見送りか、それとも同行する心算か、港にやって来た服部くんと遠山さんと船を見上げながら、ホテルから一緒に此処まで来た蘭ちゃんと園ちゃんと少年とで世間話が始まる。鈴木会長や毛利探偵、そして何でか着いて来た昨日会長室に集まっていた面々は既に船内に入っているらしい。
「2人とも、一緒に東京来る？」
「おう！もちろん行くで！」
冗談か本気か、園ちゃんが持ち掛けた提案に満面の笑みで応えたのは片杖に右下腿をシャーレで覆った服部くん。何でも、昨夜バイクでキッドを追っている最中にトラックと接触しそうになったところを避けた所為で、右足を捻挫したとのこと。
全く同じ状態、とは思えない痛々しさだ。
まあ程度が酷いのだろう。という事にしておく。�掬戮��凝戮�如何かで大分症状も違うのだから仕方ない。
「何言うてんねん、怪我しとんのに！」
恐らく色々な意味で彼より重症だが、勿論行く。
見た目には健康そのものなのだから。
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作者名：雪兎。 | 作成日時：2024年3月23日 21時
