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「...？」
君だれ？なんて聞いても良いのだけど。
名前を的確に呼んできたのは電話帳の登録名を見れば分かるし、悪戯電話だと片付けるのは簡単だけど。彼から無事に窃盗を働くなんて並大抵の技術では無い。まあ発覚して追われている、と考えられなくも無いが。
『おい蛍！聞いてんのかよ！？』
それでも、聞いた事のある声だったから。
「Let me pay you one in return when I say that if I were assured of the former eventuality I would...,」
『...in the interests of the public,cheerfully accept the latter.』
まあ一先ず、信じても良いかも知れない。
「ふぅん...。それで？警察と鬼ごっこしながら、呑気に電話して私にSOSだなんて何がお望みなの」
警察に追われている、なんて私じゃあるまいし。
彼が分かっていて私に電話をしてきているのなら恐ろしい事この上無いが、追われている以上警察には電話出来ず、毛利蘭でも鈴木園子でも無いとすれば消去法で私に掛けてきても不思議では無い。
『オレにも良く分かんねーけど！後ろから頭殴られて、変な薬飲まされた所為で小さくされちまったんだよ！』
「ん？...うん、え？」
小さく？何が？なんて瞬間的に疑問が生まれたが、今一番混乱しているのは彼だろうから質問は止しておく。それに、小さくされた、という言葉のお陰で聞いた事のある声だという理由も、声が違うという原因も何となく分かった気がしたから。
「いや、ごめん、何となく気付いた気がする...。良いよ、迎え行ってあげるから場所教えて」
『サンキュー！流石蛍、話が早ぇな！』
電話越しに明らかにテンションが上がった様な彼は、口調は高校生の其だが、声が矢張り数年前の子どもの甲高さを持っている。身近に魔女だとか言う非日常がなければ、高校生が子どもになるだなんて信じるのに時間が掛かったかも知れない。
手短に場所を伝えてくる声に頷いて、直ぐ向かう旨を伝えて電話を切る。
正直、巻き込まれたくは無いが、人間が縮むなんて予想が正しいのかなんて興味もある。電話中隣で待っていてくれた彼には申し訳ないが、如何やら家には帰れそうにない。
「ごめん、何か分かんないけど行かなきゃ...」
両手を合わせて頭を下げれば、苦笑と共に「待ってっから大丈夫だって」なんて頭を撫でられる。
「本当にごめん、直ぐ戻るから」
踵を返して走る道は、雨で斑模様に色が変わり始めていた。
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作者名：雪兎。 | 作成日時：2024年2月21日 3時
