File.13-5 ページ33
𓂃 𓈒𓏸*⋆ஐ
みじん切りの玉葱を炒めて、パン粉は牛乳に浸しておく。
「鈴木史郎、鈴木財閥会長で51歳...基本的には温厚で優しい人だけど意外と格闘技観戦が好きな資産家」
合挽き肉をしっかり練って、塩胡椒にナツメグ、粗熱を取った玉葱にパン粉、溶き卵を加えて更に練る。
「鈴木朋子...鈴木史郎氏の奥さんで、43歳の気が強めな美人。気位が高くて、売られた喧嘩は買うタイプ。敵を煽る事に躊躇いがない上に挑戦的だけど、味方に対しては優しい器の持ち主」
今までの直接的な交流で見てきた人物像と、追加で軽く調べた内容を含めて並べながら、練り上げたタネを一度冷蔵庫へ仕舞う。隣で洗い物を片付けて「突くなら奥さんだな」なんて考え始める快斗を横目に、細切りにしたじゃがいもに塩を振り、多めの油を入れたフライパンに敷き詰めて焼く。
「一回予告状出して、焚き付けてから二回目で本番...とか」
火が入って一枚にくっ付いて綺麗な焼き色が付いたじゃがいもをひっくり返し、追加で油を回し入れて揚げ焼きに焼き目を付ける。
「だな。米花博物館の方に一回行くか...警部でも解ける暗号にでもすりゃあ、博物館手前で会えるだろうし」
「じゃあ一枚目は直接家に届けて、二枚目は警部に託せば良いね」
焼きあがったガレットを取り出し、丸く成形した肉ダネをフライパンに並べて焼く中、平皿にサラダを盛っていた快斗が差し出してきた八等分のトマト一欠片を口に入れれば、甘酸っぱいというより酸味が圧倒的に勝つ其に眉が寄る。
「待って、酸っぱい...砂糖かけて」
「マジか、悪ぃ...」
ハンバーグをひっくり返して、軽い謝罪と共に渡された牛乳を口に含んで酸味を逃がし、ガレットを切り分けてくれている快斗へ「どこまで話したっけ」と苦笑して牛乳が入れられていたコップを洗う。
「予告状を鈴木宅に出す、ってとこだけど...後は日取りだな」
野菜とガレットが並んだ皿へハンバーグを乗せてデミグラスソースを添えて、オニオンスープを粧う。出来上がった其等をダイニングでは無く、相変わらずのソファセットのテーブルへ並べて開いた儘のパソコンを隣へ除けつつ二人して手を合わせる。
「エイプリルフール、とかどう?」
「嘘でしたー、ってか?面白そうじゃねえの」
料理に相談に夕食に、予告状作成に作戦会議。
手も頭も忙しない時間は、相変わらずあっという間に過ぎて行く。
.
32人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:雪兎。 | 作成日時:2024年2月21日 3時