File.13 April fool ページ29
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『それでよー、大阪の服部平次っつう高校生探偵が...』
相変わらずの我が家の地下室、と言うのも長いので『不思議の国』と掛け合わせてUnderlandと称され始めた其処で、タブレットを片手に何やらを眺める快斗のふわふわとした頭を手遊びに撫でながら電話相手の話を聞く事、早数十分。
膝に頭を乗せてソファに寝転がっている彼の、真下に来ている形の良い頭は触っていて飽きないが、電話越しにトロピカルランドでの騒動から毛利蘭と同棲が始まり、数多くの事件に遭遇し、大阪府警本部長の息子と仲良くなった上に正体を知られた話、にはとっくの昔に飽きている。その証拠に「んー...」なんていう欠片も興味の無い返事をしているというのに、彼の話は止まらない。
全自動応答機に相手をさせても気付かれないだろう。
なんて考えていると丁度『聞いてんのか？』とか言ってくるのだから、流石高校生探偵。なんて、屹度偶然なのだろうけど。
「いや、聞いてるけど...可愛い彼女とのラブラブ同棲イチャイチャヒストリー聞かされても、気の利いた返しなんて浮かばないし」
『だ...誰も、んな話してねーだろ！』
電話口で叫ばれた声に少しだけ端末を耳から離し、次いで不貞腐れたように『そもそもおめぇが連絡寄越さねえ、って言うから態々...』だとか言い始める小学生に、身体が小さくなっても相変わらずかと溜息すら出ない。
「あのさぁ、私は良いけど...他の人には謝罪とか感謝とか、もう少し配慮した方が良いと思うよ」
彼は昔から、興味と好奇心に生きる人間だ。
誰かと何かをしていても、興味を惹かれれば一直線に走り出し、置いて行った人の事は忘れてしまう。そういう部分は変わっていない上に、そんな彼を正面から受け止め続けている彼女は尊敬に値する。
『それは、まあ...悪かった、とは思ってる...』
何度も言っているが、変わらない。
他人を返るより自分が変わるべき、なんて事は彼が教えてくれた様なものだ。
「あの後風邪引いたら、高級フルーツの盛り合わせでも買ってきて貰うつもりだったけど...私の丈夫さに感謝してよね」
だから、彼を責め続ける心算は無い。
その代わり、この長々と続く電話はそろそろ遠慮したい。端末越しに『おう、悪ぃ...』なんて何度目かの謝罪に笑いながら、軽く挨拶を投げて通話を切る。
丁度一時間、という長電話は疲労だけを残していった。
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作者名：雪兎。 | 作成日時：2024年2月21日 3時
