File.12-7 ページ19
女王陛下達の席から、テーブル席をひとつ挟んだ其処。
陛下の方を見易い様に、と気を遣って座ったのに。流れる様に快斗が隣へ座ってくるから「え...?」なんて雑味の無い疑問符を投げ掛けてしまう。
「ん?どーした...?」
「え、いや...見にくくない?」
女王陛下達を背にした方に座れば、快斗が向かいの席で見易いかと思ったのに。
思い切り隣に座って、向かいの座席を空けた儘開いたメニューを覗き込んでくる快斗に首を傾げるも、何処か不機嫌そうに不貞腐れたような顔が映るだけ。
「...おめぇの顔が見えてたら、気ぃ散るんだよ.....」
「.....物凄く失礼な事言われてる?」
チラチラと振り返って女王陛下御一行を見遣りながら極々小さな声が彼から紡がれて、鼓膜を掠めてくる。言われた理由も、理由の意味も分からないが、簡単な話「集中出来ない様な独特で気の散る煩い顔面だ」とでも言われているのだろうか。
まあ、彼にとっては事実なのだろうから、思った事は言ってくれて構わないのだけれど。それにしても中々刺激的な悪態だ。
メニューを眺めていた視線を窓へと移し、反射して映る自分の顔と見詰め合う。濃い灰色の髪は漆黒のウィッグで隠され、薄いアメジストの双眸は相変わらず度の無いウェリントンが覆っている。然し、顔貌自体は特徴的な変装では無く生まれ持ったものと変わらない以上、傷付かない訳では無い。
「.....そんなに変な顔してるかな」
ぺたぺたと頬を触って自問していれば、後ろから伸びた手が頬へ触れて頭を回される。
「何か勘違いしてねぇか...?」
振り向かされた先で半眼に呆れた様な表情を見せる快斗は距離を縮め、問い詰める様に覗き込んで来るから。
「えっと...不細工で気が散る、って話.....?」
緩く首を傾げながら、思った事を返しただけなのに。
「...ばぁか、逆に決まってんだろ」
場所も雰囲気も状況も置き去りにして、
「...、.....へ?」
口許に優しい体温が触れた、のは多分気の所為じゃない。
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作者名:雪兎。 | 作成日時:2024年2月21日 3時