File.12-6 ページ18
前もって、なのか非正規ルートなのか。
兎も角、何処かの店主に用意して貰っていたサロン車の予約チケットを出入口の車掌へ渡し、サロンスペースへと通してもらう。
流石は一流の豪華列車。
レストランとバーをひとつの車両に詰め込んだ様な豪華さ。片側にバーカウンター、反対側には四人掛け出来る白いテーブルクロスの掛かった食事席が幾つか並んでいる。そして、その中の一席には大量のスーツ姿の日本人男性と、ブロンドの美しい女性。
「えっと...中森警部、ですか?」
黒服にサングラス姿の男達が見えていないかの様に割って入り、女王陛下の隣に座る男性へ首を傾げてみせる。
するりと割り込んだ女子高生へ、女王の護衛らしき男達がサングラス越しに鋭い殺気を飛ばしてくるが、そんなものに気付かない女子高生は男子高校生の手を引きながら女王陛下の前へ出る。万人に警戒するのは護衛としては素晴らしいが、高校生の見た目をした人間に殺気とは、見境が無いのも如何なものか。
「おーっ!快斗君!と...」
「青子ちゃんのクラスメイトの、黒咲夏月と言います」
顔を真っ赤にして呂律も怪しい、目が座り始めている中森警部へ「はじめまして」と頭を下げる。何故女王陛下の隣に堂々と座って酒を飲んでいるのか、盗聴器を壊されてから何が起きたのかは分からないが、屹度使いものにはならないのだろう。
洋酒で茹で上がった顔の儘「陛下!うちの娘のクラスメイト達ですよ!」と女王陛下へ紹介してくる警部へ「まあ...」なんて気分を害する事無く微笑む辺り、中森警部を酩酊させたのは陛下の仕業らしい。
「どうしたんだ、二人揃って...」
「あ、彼が青子ちゃんのお父さんがいらっしゃると教えてくれたので、ご挨拶にでもと...」
柔らかく微笑みながら頭を下げてみせれば「青子が羨ましがってましたよ、女王陛下にお会い出来るなんてって」と嘘か本当か、快斗が中森警部へ声を掛ける。まあ彼女なら言いそうな辺り、本当なのだろうけれど。
「ご挨拶だけですので、私達はこれで...」
話しながらも酒を傾ける警部に、大丈夫だろうかなんて考えも浮かぶが、喩え飲酒していなくても結果は変わらない。
「ウロチョロして警備の邪魔するんじゃないぞー!」
「はぁい、警部も程々になさって下さいね」
酒の所為か、大手を振ってくる中森警部へ小さく手を振り返しながら予約の席に着く。
あれは多分駄目だな、なんて見れば分かる。
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作者名:雪兎。 | 作成日時:2024年2月21日 3時