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File.11 小さくなった名探偵 ページ1

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休日、というものは人によって違う。



社会人なら暦通りにはいかないだろうし、学生は暦通りの生活をする者が多いだろう。一昨年まで毎日が休日で毎日が仕事だったと考えると、不規則過ぎる日常も悪くないと思える程に、平日朝早く起きて学校へ通うのが億劫だ。



「おーい、電話鳴ってんぞ」



自宅、の地下のソファでゴロゴロしている早朝。



今日も相変わらず朝早くに遣って来て朝食を作っている快斗が奏でる生活音を聞きながら転寝していれば、先程から鳴り出したのはスマートフォン。テーブルに置かれているスマートフォンは四台。此位置と距離ではどの端末が鳴っているのかは分からないが、大事な仕事用では無さそうなので手を伸ばすのも面倒。



「代わりに出てー...」



声が同じなら他人でも大丈夫。



こういう時に声帯模写は便利だと、クッションを抱えて寝返りを打つ。未だベッドで寝ていても良かったのだが、快斗が来て朝食作りをしてくれている以上起きた方が良いかとベッドから這い出して、今に至る。



全く目が覚める気配が無いと悟ったのか、響いていた生活音が途切れたかと思えば、間近まで足音が近付く。



「ほら」



促す声に誘われて持ち上げた瞼によって、霞んだ視界に携帯端末が映る。態々持って来てくれたらしい其は鳴り止む事を知らない様に電子音を響かせていて、眠りを妨げてくる。



「んー...、.....はい、もしもし...」



スマートフォンも諦めなければ、彼も引き下がる心算は無いようで、渋々其を受け取って通話ボタンを押す。寒い朝の空気に身体を丸めて足先を擦り合わせながら口を開けば、電話口の相手が声を発するより早く柔らかい毛布が掛けられた。



『もう!やっと出たわね、蛍。そろそろ電話不精どうにかしたら?』



ふわふわと身体を包む温もりに再び睡魔が襲い掛かってくる中、くしゃりと頭を乱してくる快斗の手に、小さく咲いた笑みを隠す様に毛布を引き上げる。



『ちょっと蛍、聞いてるの?』



「...まだねむい、から...あんまり聞いてない.....」



眠気なんて飛んだが、眠いからという事にして毛布の中に逃げておく。頭上から降った微かな笑い声からして、彼には気付かれている様だが、まあ良い。



髪へ手櫛を入れ始めた彼の指に、矢張り再び顔を出してくる眠気を感じつつ『全くもう...』と呟く電話の相手の声に小さく謝罪を添えておく。






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作者名:雪兎。 | 作成日時:2024年2月21日 3時

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