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File.8-7 ページ7

𓂃 𓈒𓏸*⋆ஐ




パイシートなんてものを考案した人には心から感謝している。



解凍しておけば、お菓子から食事に至るまで、ありとあらゆる料理に対応してくれるという万能さ。そんなパイシートは解凍済みで、冷蔵庫で出番を待っている訳だが、まあ如何にも分量が多過ぎたかも知れない。普段から二人分の感覚で料理しているのが良くないのだが、再冷凍する訳にもいかず、一先ず明日米花町にまで持参するしかないかと諦める。



それもこれも、誰かが悪いという訳では無いのだけど。



そろそろ日付けも変わろうかと言う時間。キッドを屋上に放り投げて帰宅してからは、二時間程だろうか。未だ夕食を済ませていなかったなと、学校から帰って解凍しておいたパイシートに、海老と法蓮草と卵に生クリームにチーズのストックを確認して、調理を始めてからは三十分程度。



中森青子の誕生日パーティーは無理でも、誕生日自体には間に合っていると良いのだが、私が態々電話して確認するような事では無い。それに、如何やら彼には愛想尽かされたようだし。



フィリングと卵液を端へ寄せて、パイシートを薄く延ばす。タルト型に合わせて敷き、余った生地を切り離しながら、ふと考えてみる。



最近まで事故だと思っていた親の死が、実は誰かの手によって引き起こされたものだと知ったとして。理由も原因も分からない儘必死に足掻いている自分の近くに、理由も原因も首謀者も知っている人間が居たのなら。



何故教えてくれなかったんだと、怒るのは当然というべきか。



とは言え、私は彼に怪盗キッドで居て欲しい訳では無いから。



父親の為に命を危険に晒すような人間には、なって欲しくないから。だから千影さんも教えなかったのかも知れない。ただ、私に頼み事をしてきただけなのだろうけど。



そもそも、彼が真相に気付かないように頼んできたのだとしたら。



何と言う失態をしたのやら、謝罪の言葉も無い。



若しそうでは無かったにしても、私が彼に全てを話す事は無かっただろうけど。



考えてもみて欲しい。



世界中に散らばるビッグジュエルの内ひとつだけ、ボレー彗星の輝きに呼応して不老不死の力を授けてくれる『命の石』が隠されている。なんて話を信用する方が如何かしてる。そんな突飛な話、私がするよりも何の感情も無く人を殺める人間が言う方がまだ信じられる。






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作者名:雪兎。 | 作成日時:2024年2月11日 1時

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