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File.10『Gitanes Caporal』 ページ28

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『ちょっと!どうして来てくれなかったのよ!』



帰宅の挨拶を終えたばかりの、賑やかな談笑を繰り広げる放課後。



此処数日鳴り続ける携帯端末もそろそろ応答した方が良いかと出た瞬間、教室の喧騒を攫って行く程の怒声に、耳に当てていたスマートフォンを遠ざける。突然響いた女の子の怒鳴り声に瞬間、教室が静まり返るが気にしない。『昨日も一昨日も、電話しても出てくれないし!』と遠くからでも聞こえるお説教に、机に頬杖を付きながら端末を耳元へ戻す。



「だから、行けるならって言ったでしょ。それに...昨日も一昨日もちょっと色々あって、まあ、必死だったの許して」



『必死、って...ちょっと蛍、また変な事に首突っ込んでるんじゃないでしょうね?新一に似て危なっかしい所があるんだから、気を付けなさいよ』



彼に似た心算は無いが、強いて言うなら彼が私を引っ張り回すから必然的に同じ様な扱いを受けている。そんな事分かってくれてはいそうだが、心配してくれる彼女には「善処します」なんて笑って返しておく。



まあ、それもこれも今も尚後ろの席で不機嫌そうに凝視めて来る彼の所為。という事にしておく。



時計台の一件が土曜日、何とかドキドキ大作戦が日曜日。勿論水族館には行かず月曜日、火曜日と毛利蘭からの電話が鳴り響いているのを出ずに、今日が水曜日。あの時計台の夜から家には帰っていない、が、それは確実に後ろの彼の所為。日曜日は未だ良かったが、月曜日火曜日と下校を狙って追い掛け回してくるものだから、生半可な心構えで帰宅の時間を迎えると捕まる。



それを教えられたのが土曜日の話。



登校だって予断を許さないのだから一層休めば良いのだが、居候先のアレが煩いから困ったものだ。そもそも何故追われなければならないのかも疑問だが、追われれば逃げたくなるのが泥棒の性、というより人間の本能。



弁明をする心算か、謝罪がくるのか、殴られて捨てられるか。



まあどれにしろ、素直に受ける心算も無い。が、気を張り続けるのも正直疲れる上に、別に如何でも良くなって来たのだから私の沸点持続時間の短さには自分でも呆れる。



とは言え、一度始まった鬼ごっこを投げ出すのも釈然としない。



『それで?今から園子とケーキバイキング行くんだけど、どうせ蛍は来てくれないんでしょ』



「あー...うん、ちょっと野暮用が...」



というより鬼ごっこが。






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作者名:雪兎。 | 作成日時:2024年2月11日 1時

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