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File.8-2 ページ2

𓂃 𓈒𓏸*⋆ஐ




「『怪盗キッド、今夜も予告状!』」



相変わらず過ぎる朝の学校も、最早飽きてきたと言っても許されるだろう程に、変わり映えしない。



登校して席に着くなり朝刊を開いて怪盗キッドの記事を朗読し始める快斗の声に耳を傾けながら、此方も変わらぬ向きで椅子に座り本を開く。『狙うはインド最大のサファイア』と鼓膜を揺らす声に視線を流せば、楽しそうで悪戯っ子然とした笑みを浮かべる彼が目に入る。



自分の記事で喜べるとは、実に犯罪者向きだ。



一層尊敬すら浮かぶ様子に溜息を吐くより早く、快斗の背後から突然伸びて来た手が開かれた新聞を抜き取り、彼の手から攫っていく。私からすれば犯人は見えているが、突然手から抜かれた新聞に「へっ?」と声を上げる快斗が背後を振り返るより先に、購入して数時間も経っていない新聞は中森青子の手によってグシャグシャと丸められていく。



「お、おい...」



普段なら明るく、機嫌が傾いている時ですら元気な彼女が無言で新聞紙に八つ当たりしている様子は、流石の幼馴染も牢籠ぐらしい。



心配した様で戸惑ったように声を掛けた快斗は、



「何が怪盗よ!何がキッドよ!頭にくるわね!!」



彼女が全力投球した新聞紙ボールに殴打されて仰け反った。



「今月はもう6件目よ!お父さん、ろくに寝てないんだから!」



放られて快斗の頬を抉った新聞紙は天井へと跳ね上がり、重力に従って落ちてくる。それをキャッチしながら「じゃあ諦めて帰りゃ良いのに、あのヘボ警部...」とボヤく快斗の愚痴を聞き流し、新聞ボールを広げて細かくなる様に割いていく。



「まったく...今日は青子の誕生日だって言うのに、お父さんったらキッドに掛かりっきりなのよ」



割いた新聞紙の量は中々だが、それを両手で包む様に持って息を吹き込む。



「青子ちゃん誕生日なんだ」



「そうなの!それで今夜誕生日パーティーなんだけど、夏月ちゃん今日予定空いてたりしない?...あ、快斗も序に誘ってあげても良いわよ」



本命と序が逆だろうが、態々指摘する程嫌味な人間では無い。



細かく割いた新聞を持った両手を青子ちゃんへと差し出しながら「ごめんね、今日先約があって...」と苦笑すれば、向けられた手に首を傾げながらも「そっか...」と然も残念そうな声が返ってくるのだから女の子というのは恐ろしい。



いや、彼女なら本気で残念がってくれているのかも知れないけれど。






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作者名:雪兎。 | 作成日時:2024年2月11日 1時

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