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File.4-6 ページ6

警官が張り付く展示室。



普段は中森警部が部下へ指示を飛ばしているだろう時間だが、生憎今日は警部は怪盗キッドの現場へ赴いている。同日を目当てに出した予告で怪盗キッドを優先するとは、キッドに対する熱量は相当なものらしい。



だからと言って、蔑ろにされて悔しいなんて事は無い。



寧ろ静かに事が済みそうで何よりで、今も大量の制服警官と数人のスーツ姿の刑事が周囲を警戒しているだけ。そもそも中森警部が予告状の暗号を解読出来ただなんて期待はしていない。現に、予告を出した日の夜からこの博物館に警官が蔓延り続けている事も知っている。今日は、怪盗キッドが堂々と日付を指定してきたから中森警部は其方に行っているに過ぎない。



それに、予告の時間だって如何せ解明出来てはいないのだろう。そのお陰で数日間にも及ぶ警備映像が、十分過ぎる程に録画されている。今日も今日とて、数人の警官が中央警備室で監視モニターを眺めているのだろうが、監視カメラは警備中の映像をループさせているだけで何も起きはしない。



だれかが騒ぐ事無く、秒針が規則的に時を刻んでは長針が時折進んでいく中、スタニスワフ・マルチン・ウラムが持ち出した幸運な数字の内7番目に当たるその瞬間。



展示室一帯のスプリンクラーが弾け、勢い凄まじく液体が室内へ降り注ぎ始める。



突然の異常事態に騒ぐより、無線機で応援を呼ぶよりも。自身を濡らす液体が気体へと化けて意識を攫っていく方が幾分も早く、数分を待たずして展示室には成人男性の無惨な寝姿が広がっていく。最後の一人が壁を滑るように眠りに落ちて数秒後、警官の制服を着たまま静かに扉を開けてみる。


矢張りビー玉を模すより直接掛けた方が効果は確実だが、如何せんスプリンクラーの貯水槽から水を抜いた上で揮発性の薬品を突っ込むのは難易度が高い。それに加えて、目に見えない所為で薬品が未だ室内で効力を発揮するかも不確かなのは危ない。



すぅ、と息を吸い込んで室内へと脚を踏み入れる。



床に寝転がる警官達を飛び越えながら、真っ直ぐ進んだ先の展示ケースの中。予め電子錠を外しておいたケースを開けて、静かに佇む天使を抱き上げる。彼女が抱いたサファイアはオーバルカットを持ち、透き通った其は室内の明かりにすら煌めきを放つ。



彼女には一先ず外迄の同行を願いたいが、願わくばその宝石だけを貸して頂きたい程に像の部分が大きい。



19.32g/㎤ という純金を舐めてはいけない。






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作者名:雪兎。 | 作成日時:2024年1月27日 11時

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