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File.7-10 ページ43

𓂃 𓈒𓏸*⋆ஐ




インカ帝国時代から愛されてきたロードクロサイト。



日本ではインカローズと呼ばれ親しまれてきた薔薇色の宝石が、今回大島美術館で開催されている『インカ宝物展』の目玉。マーキスブリリアントに整えられた宝石は炎に見立てられて、展示室の中央の巨大なキャンドルスタンドを模した台座に飾られている。



大きさにして、男性の片手でも零れる程の、正にビッグジュエル。



朝から探偵さんに絡まれた日の夜。展示室を警備する警察官に紛れて、二階のキャットウォークを担当する班に紛れ込む。数mおきに配置された警官の一人として、一階の展示室を見下ろしていれば「やっほー!お父さん!」という、犯罪現場には似つかわしくない明るい声。



結局、予告現場へ素顔で現れた快斗と、中森青子。制服の儘遣って来た彼等は中森警部や白馬探と何やら会話を始めている。



「警部!予告1分前です!」



一階の展示室を担当する警察官の緊張感のある声に、場の空気が引き締まる様子を惘眺める。特に動き出す気も無さそうな快斗は棒立ちを決め込んでいるが、そんな彼へ近寄った白馬探が唐突に彼へ手錠を掛けているという状況に、イヤフォンの電源を入れる。



『な、何の真似だよ!?』



『もうネタは挙がっているんだよ。キッドの残した頭髪から、彼が高校生だと判明した。そして、現役高校生とキッドのデータを照らし合わせていく内に...ある名前が弾き出されたのだよ』



快斗が仕込んでいるマイクが拾う会話を聴きながら、彼の寝不足の原因はこれかと最早呆れしか出てこない。執念というか執着というか、彼の興味と好奇心はすっかり怪盗キッドへと移ってしまったかも知れない。



『黒羽快斗、君の名前がね!』



『んな...偶然だよ、偶然...』



『ふん、今に分かるさ。予告時間になればね』



そう、時間になれば分かる。



「警部!時間です!」



制服警官が宣言すると同時に、袖に隠していた20cm程度の棒を取り出し、勢い良く振る。一気に延びた其をオーバースローの要領で投げれば、巻いていた釣り糸がリールを回転させながら真っ直ぐ飛び、糸先に着けた接着剤がロードクロサイトに接触する。



それを躊躇う事無く一気に巻き取れば、インカ時代から燃え続ける炎が何の前触れもなく真っ直ぐに飛ぶ。



「な、なにぃっ!?」



突然飛び出していった宝石に驚く者と、唐突に隣で奇行に走り出した同僚に驚く者。



空気は一変する。






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作者名:雪兎。 | 作成日時:2024年1月27日 11時

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