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File.7-6 ページ39

𓂃 𓈒𓏸*⋆ஐ




「で?寝不足なのは本当って訳ね」



早過ぎる朝の遣り取りを経て登校した直後、机に突っ伏して寝息を立て始める快斗を眺める様に、自分の席に横向きに座って携帯端末を開く。本来の自分用の、数人しか知らない此端末に連絡を寄越してくる誰かさんの文面を読みながら口を開くも返る声は無い。



丁寧に日本語で打ち込まれたメッセージ。



今度日本で仕事になるからアジトに使わせてくれ。何なら仕事も手伝って欲しい。と言った内容の其は文面から見ても軽薄な口調だろうと想像に難くない。そんな要求に、いやだ。勝手に上がり込んで来たら変装マスクに接着剤塗り付ける。と手早く打ち込み返信すれば、悲しげな表情のスタンプが戻ってきた。



生憎その手に乗る程莫迦じゃない。



しっかり無視してスマートフォンを仕舞うのと同時。教室の扉が勢い良く開き、その音に釣られて寝惚け眼の快斗が頭を持ち上げる。視線を送った先の粗暴に扉を開いたのは白馬らしいが、頭髪は無惨に乱れ、眼の下にはくっきりと隈を飼い慣らし、自称英国紳士の見る影もない。



「こわ...」



小さく零れた感想は、屹度彼には届いていない。



何故なら、



「おんやぁ?だいぶ寝不足のようだな。まあキッドに三日連続で盗まれちゃ疲れも溜まってくる、ってもんか」



睡魔や疲労と戦っているらしい探偵の眼は、敵対心剥き出しで煽る快斗にしか向けられていないから。



「ふっ...君程でも無いさ」



不愉快さを滲ませるでもなく、無視する訳でも無い。何かを確信しているかの様に自信に満ち溢れた此雰囲気を、私は知っている。首を傾げながら「オレは無茶苦茶元気だぜ?」なんて能天気に返す快斗の足先を小突く。机に隠れて見えにくい其処で許される遣り取り等高が知れてるが、無いよりはマシだ。



「では君を、今夜キッドが予告した大島美術館に招待しよう。そうすればボクが疲れている訳も分かる筈さ」



快斗は兎も角、白馬が彼に挑戦的な態度を取る理由は屹度、快斗のこの態度だけが原因では無いのだろう。恐らく彼は何かを掴んでいるのだ。快斗の何かか、怪盗キッドの何かを。



「それとも、何か来られない理由でも?」



咋な含みを持った口調に、思案する様な難しい表情を見せること僅か一秒足らず。



「行ってやろうじゃねえか!お手並み拝見させて貰うぜ!」



明らかに小馬鹿にした顔を見せながら承諾した快斗に、呆れを通り越して尊敬すら浮かぶ。






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作者名:雪兎。 | 作成日時:2024年1月27日 11時

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