File.6-3 ページ29
𓂃 𓈒𓏸*⋆ஐ
心に響く言葉
感動させる歌姫
奇跡を齎す天使が
聡明なる女教皇を
裁判の女神へと導く時
至福へ誘う星の輝きを
頂きに参ります
Carroll Notes
歌姫にボイストレーニングとリハーサルがあるように、スポーツ選手に基礎練習とフォームチェックがあるように。手品師には指先のトレーニングやマジックテクニックの基本練習があり、怪盗には仕掛けの用意と事前の下調べと侵入が数日も前から必要である。
時には数日では如何にもならない場合もあるが、盗み出す為の数秒から数分の為には妥協してもいられない。
今回は如何かと思ったが、何とか数日で仕上げて今に至る。
宝石が輝く様にと薄暗く設定された室内は、博物館側の意向で警備中も明かりを煌々と付けてはいない。そんな広大な展示室の真ん中に飾られた『至福の金星』は、淡いスポットライトで照らされて真珠が持つ柔らかい輝きを覗かせている。
今日も今日とて予告状を叩き付けたキッドを追い掛けていった中森警部はおらず、要望通り白馬探をも引き付けてくれたらしく彼も不在。
だと言うのに、
「工藤くん、忙しいのに来てもらって悪いね」
「いえ、お気になさらず。僕としても暗号の主が気になるので」
何故あの工藤新一がいるんだか。
中森銀三と白馬探が十人ずつ居るより拙い。
最近連絡も無いから捜査に行き詰まる事も無く、毛利蘭や鈴木園子から何かのお誘いも無いので多忙過ぎて時間が取れないのだろうとは思っていたが、真逆予告現場で会う事になるとは。
「なあ、彼って高校生探偵の工藤新一くんだよな...？」
展示室で張り付いて警備する制服警官に紛れて立つ中、隣の警官へ話しかけてみる。するとなんの疑問も無く「ああ」と口を開いた警官は、視線を前から外さない儘世間話の様に詳細を語り出す。
「何でも、警部がキッドに向って予告状の暗号が解けなかったから、彼に協力要請を出したらしい」
「なるほど、そりゃあ心強い」
解けずに宝石に張り付くか、白馬探に解いてもらうか。大体彼等の行動パターンは決まっていたのに今回は白馬探不在の中、ピンポイントで当ててきたと思っていれば。
捜査一課で重宝されている高校生探偵を捜査二課まで出張させるとは、日本警察は人手と頭脳の不足甚だしい。
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 58人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：雪兎。 | 作成日時：2024年1月27日 11時
