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好きな人と付き合う、って何。
ではなくて、結婚したり子どもを授かっても良い相手の事を「好きな人」というのだ、なんて私の認識が違うのだと初めて知った気がする。
あたたかくて穏やかで楽しい時間だとするなら、好きな人とお付き合いするというのは違って見えてくる。想い合った同士が色々な場所にデートと称して出掛けるのも、夜に不意に電話したくなるのも、楽しくて幸せで安心した時間なのだろう。
そう思うと、
「なら...私、快斗の事好きなんだと思う」
数ヶ月前に言ったことをまた言うようだけど、辿り着いた過程がやや違う。一緒に居て楽しくて、楽しそうな笑顔を見ていたくて、次に逢える日が楽しみで待ち遠しい。それが詰まり好きだから、という理由なのだとしたら。
初めて人を好きになったのだと思う。
小さく漏れた笑みは苦笑に近く、私自身何に困っているのかは分からないが、突然恥じらいの乙女顔負けに頬を染めながら「良かった！」と嬉しそうに喜ぶ青子ちゃんは気付いていないに違いない。
「夏月ちゃんに快斗なんて勿体ないけど！応援してるね！」
机から身を乗り出して手を握ってくる青子ちゃんの活力は何処から来るのやら、自分の事のように喜んでいて、隣の席で他人事を貫く快斗とのコントラストが激しい。
「なんか、嬉しそうだね...？」
何だか貶められている気すらしてくるが、彼女はそんなに回り諄い性格では無い筈なだけあって逆に恐ろしい。そんな私の気も知らず相変わらず嬉しそうな彼女は「だって」と楽し気な話が始まりそうに、口を開く。
「薔薇のお姫様に会えたんだもん！」
「.....なんか、前も言ってたけど...それなに？」
時折彼女の口だけから聞かれる薔薇、の単語。全く私の預かり知らぬ場所でどんな話がされようが構わないが、聞かされる以上その正体を知りたくなるのは人間の性。だと言うのに「おいアホ子！」と突然隣から飛んで来た声が、青子ちゃんが開きかけた口に制止を掛ける。
「何よ快斗、別に良いでしょー？」
「良い訳ねぇだろ、朝っぱらからうっせえな」
漸くと新聞紙から顔を上げた快斗は、半眼を青子ちゃんへと向けながら口悪く言い争いを始める始末。高校生の男の子は屹度これくらいの悪餓鬼なのだろうが、女の子に美しくない口調を晒すとは頂けない。
紳士として、もう少し柔らかい言葉を選ぶ努力を求めたいところだが、黒羽盗一氏の様な男性へはまだまだ遠いらしい。
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作者名：雪兎。 | 作成日時：2024年1月27日 11時
