不思議の国の魔法使い《2》 (ページ18)

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𓂃 𓈒𓏸*⋆ஐ

白雪舞う満月の夜
ルナとユピテルが手を取るとき
鬱屈なる青き時を見詰めた
緑色のマニキュアを
頂きに参上する

怪盗キッド

飢餓月嗤う冬の空
セレネとゼウスの目が合うとき
薔薇咲く暦を編み込んだ
黄色のセーターを
頂きに参ります

Carroll Notes

『いいか！奴等が予告したのは日没から1時間後の18時57分だ！』

室内だと言うのに寒さすら感じる電算機室。相変わらずこんな場所に入り浸っている現状に漏れた溜息は、最早白く凍りそうですらある。ただ今回良いのは警察官の制服を拝借しているお陰で指先が震える程では無い。

警官達が集まる展示室に侵入しているキッドが付けたマイク付きイヤホンから聞こえてくる中森警部の声を聞きながら、メインフレームに上り通風口を開けて中へと滑り込む。匍匐前進という窮屈過ぎる移動を経て、中央監視室の一角に繋がる柵蓋から中を覗き込んだ先、普段は警備員が管理しているだろう其処は数人の警察官で埋められており、大量に設置されている画面には美術館内の映像が映し出されている。

『何としても絵画を死守する！』

通風口蓋の隙間から見える映像と、イヤホンから聞こえてくる声が重なってる中、数粒の水色の玉を取り出す。ピンポン玉程度の大きさを持つ其は先日のビー玉の改良品であり、薬液が噴き出す様にガス式へと様変わりした代わりにサイズがふた周り程大きくなった其を六個隙間から放る。

床に当たって弾けた水色は勢い良く白煙を吐き出して室内を霞ませていく。人影も見えない中「何だ！？」と騒ぐ警官も数秒と待たず衣擦れを無くして、周囲に漂った白煙が晴れた頃には床に数人の警察官が倒れ伏しているという異常事態が完成した。

少し多過ぎた様な気がするが、足りないよりは良い。

死屍累々に近い風景を作り出した室内へ、通風口の蓋を外して入り込む。未だ室内の画面では警官達が大量に行き来しており、音が無くとも騒がしさを感じる映像だ。

「Hi,my lord...展示室前廊下の右手12m地点にいるシャーロキアン、仕事前に極力接触しないようにお願いします」

ずらりと並ぶ画面の中、廊下を表示する映像に映り込んでいるシャーロック･ホームズのコスプレを晒している人影。画面越しの遠目にでも分かる異常者だが、あの特徴的過ぎる風貌は先ず間違いなくロンドンを我が物顔で席巻する高校生。

不意に振り返った彼と、目が合った気がした。

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