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File.5-3 ページ16

淹れたミルクティーと、切り分けたガトーショコラに苺とホイップクリームを添えた其をテーブルに並べてソファに座る。斜め前に座った快斗はカトラリーを置きながら「それにしても」と口火を切った。



「キャロル以外に動く、って何してたんだ?」



「あー...」



一口切って刺したフォークが口に届くより先に、躊躇いと困惑を混ぜた声が漏れる。彼からしてみれば素朴な疑問だろうが、事細かい話をするには相応しい雰囲気では無い。



「軍事施設の爆破とか、国家企業にサイバーテロとか...?」



言っておくが人を殺めた事は無い。私の所為で社会的に殺された人が居るか如何かは分からないが、扱った銃火器やら殺傷道具で人間を標的にした事は無いのだからセーフ、という事にしている。因みに私は自分がやりたくて実行している訳では無いと強く言っておきたい。誰かさんが執拗くせがんで来て煩いから協力しているに過ぎない。



だから無罪だと言う心算は無いけど。



「.....なんつうか、盗みが可愛く思えてくんな」



「それは同感」



漸く口へ辿り着いたガトーショコラはしっとりとしていて、有名店には遠く及ばないが悪くは無いという感想。添えた鮮やかな苺を口に含んでいれば「うまっ!」なんて大袈裟な声が上がってくる。



「また作ってくれよ。材料買ってくっからさ」



「良いけど...そもそも今日って打ち合わせじゃなかった?」



きらきらと眩し過ぎる笑顔を見せてくる快斗は可愛い上に、断れるような雰囲気を遮断してくるが、一日を菓子作りで終わらせる訳では無いと思い出して欲しい。正反対な表情を浮かべながらミルクティーを啜る私に「やべ、忘れてた」と零した彼は、持参したらしいパソコンを広げる。



「今上野で絵画展やってるだろ」



パソコンの画面を此方へ向けながら「これなんて良いんじゃね?」と示したページには二枚の絵画が並べられている。西洋美術館で開催中のピカソ展。そこで大々的に取り上げられている二枚を拝借しようと言う事らしい。



「絵ねえ...良いけど、持ち運びが大変そう」



緑色のマニキュアを塗った女性と、黄色のセーターを着た女性。



だと思われる絵画だが、芸術というのは分からないものだ。






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作者名:雪兎。 | 作成日時:2024年1月27日 11時

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