File.4 緋色の誘惑 ページ1
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孔雀降り立つ水張月
彼女を祝う聖なる夜
7番目に幸運を齎す数字が
文字板を飾るとき
聖なる天使を頂きに参ります
Carroll Notes
折角の有名な日。
「だぁからー、たまには協力してくれても良いだろ!?」
そんな日に予告状を叩き付けたのは、私が先。いや何も先か後かで張り合っている心算も無いし、だから何が問題なんだと思わなくも無い所為で、何故朝からこの男に怒られているんだか理由は分からない。
「別に手伝うのは良いけど、今回は仕方無いでしょ?」
相変わらず美味しい快斗の朝食を頂いて、最早恒例と化した登校風景を晒しながら歩く街中。彼は久々に仕事を入れた私でも、狙った獲物に対してでも無く、同日に仕事が入った不満を抱いているらしい。其処までは良いが、協力してもらえないという結論に至って機嫌を損ねている理由だけは不明だ。
「そうだけどよぉ...一緒に仕事してみてぇじゃん」
「あー...まあ、興味はあるけど」
なるほど、とは思わなくも無い。
そろそろ一緒に仕事してみたい、なんて思ってくれているのは嬉しいし面白そうだが、そんな矢先に相談無く予告を出した私に不満を抱いたのだろう。とは言え、私自身仕事量を制限する心算等欠片も無いのだから気にしなくて良いのに。それとも私の方の計画に協力してくれる心算だったのかも知れない。
「なら今度快斗が考えてよ、私が乗るから」
空いた右手を快斗の前に出して、手を返す。手品的にその指に挟ませて差し出したのはキャロル達の予告状。葉書サイズのブランクカードには『不思議の国のアリス』を思わせる透かし状のデザインが刻まれており、厚紙より分厚いそれの右下には懐中時計とトランプ、主人公のアリスが金色でデザインされ『Carroll Notes』の筆記体が踊っている。
演目、こと一仕事のメイン演者によってデザインしているキャラクターが違うが、専らアリスの柄が使用頻度が高い。
差し出した空白の予告状を受け取りながら「りょーかい」と機嫌を一変させた快斗は手にした予告状を凝視める事暫く、それを鞄へ仕舞って、早速次の仕事を探すかとスマートフォンを触り出す。
「なぁー、何が良い?」
「美味しいタルトとかパフェが食べたい」
そんな事より今夜の仕事を考えた方が良いだろうに。
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作者名:雪兎。 | 作成日時:2024年1月27日 11時