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File.1-13 ページ17

𓂃 𓈒𓏸*⋆ஐ




人間ひとりが飛ぶには問題無いが、二人を運ぶ為には二枚翼では足りない。万が一の為に四枚翼をつくっておいて良かった、なんて改めて考えつつ寺井さんと二人で街を行く。



日付もゆうに超えており、歩く人は殆ど居ない。



「本当に、申し訳ございません...」



先程から隣で零される謝罪は、果たして何に対してされているのやら。盗一さんが怪盗キッドであった事が彼に露呈した事か、黒羽くんが怪盗キッドになった事か、私が寺井さんを運ぶ羽目になった事か。どれだとしても私が謝られるような話では無いので謝罪されても困るのだけど。



「謝るなら私じゃなくて黒羽くんじゃない?」



既に照明の落とされているプールバー。其の横から路地裏へと入り、裏口を開けてバックヤードへと踏み込む。すっかり気落ちして後ろから着いて来るだけの男性の店なのだが、私も私で遠慮なく店内へと入ってカウンターに座っていた青年へ視線を向ける。



「まあ、彼が受け取ってくれるかは分からないけど」



「快斗ぼっちゃま...!」



相変わらずの明るさで「よっ、ジィちゃん」と手を振ってくる黒羽くんは、カウンターライトだけを付けた店内で水のグラス片手にスマートフォン端末を弄んでいたらしく其をポケットへと仕舞う。彼の隣の席へ座り、未だ黒羽くんへおろおろと視線が泳いでいる寺井さんへ小さく手を挙げる。



「シンデレラひとつ」



「オレ、ヴァージン・ブリーズね」



店主へ時間外営業を強いておきつつ、店主から黒羽くんへと視線を移す。つい先程に、父親の秘密を知った上に警察官達から逃げ切ったばかりとは思えない普段通りの、笑顔が眩しい男子高校生。



「それで?盗一さんの話は千影さんから聞いた方が早いと思うけど、私から聞いておきたいことがあれば何なりとどうぞ」



トランプを広げて差し出す。



「オメー、花染Aだよな?小三の頃まで良く一緒に遊んでた」



彼が引いたのはHeartのA。



「そう。10歳で日本を離れて、去年帰ってきたの」



残りのカードを束で彼へ渡せば、引いたカードと合わせて束が切られていく。



「んで?黒咲夏月、ってのは?」



鮮やかな手捌きで切られたデックが返却される。



「千影さんが、黒羽くんの面倒見て欲しいって言うから...」



束を左から右へ、私の方から黒羽くん側へとスプレッドさせて。



「一年間君のストーカーしてた」



美しく広がったデックを指し示す。






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作者名:雪兎。 | 作成日時:2024年1月11日 23時

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