あの日の景色に焦がれたら

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寮での夕食時間。
俺の前には舘さんと翔太。


「二人は、自分が青春してると思う？」
「何、その質問。」
「自分探しでもしてるの？」
「ちげーよ！」


質問したら、どん引きされた。
なんでだよ、大真面目に聞いてんのに。


「ごめんごめん。
照のことだよね。」
「いやだから青春のこと！」
「つまり照じゃん。」


だから違うんだって。
と、一気に疲れる。
この二人、息が合いすぎなんだよ。


「照がいるから青春するはずが出来なくて困ってるんじゃん。」
「そうなの？
俺は謳歌してると思ってたけど。」


舘さんの言葉に頷く翔太。
え、なんで照がいると青春なわけ？


「俺は許嫁がどうだとか家がどうだとかそういうの関係無く本当に楽しいことがしたいの。
そういう青春って、学生時代しか無理じゃん。」


そう、いつかは俺の意志と関係無く、決められたレールを真っ直ぐ進まなきゃならない。
だったら、今くらい自由でもいいじゃん。


「そうだけど、好きな人と思いきり過ごせるっていう青春も、学生時代しかないよ。」
「照とのこと、早く素直になった方がいいんじゃないの。」


それって、俺の好きな人、照ってていになってない？


「あのな、俺の好きな人は照じゃないから。
それは昔の、小さい頃の話だから。」
「だったら、さっさと振ってやればいいじゃん。」


え？


「そうだね。
可能性があるならまだしも、無いのにずっと宙ぶらりんなままは可哀想じゃない？
許嫁っていうある種のビジネスパートナーとしてしかやっていけない意志を示さないと。」


照を、振る。
考えたことも無かった。
でもたしかに、その選択肢があった。


「…そうだったな。
そうすれば良かったのか。」
「うん。
ふっかにはふっかの限らた時間があるように、照には照の、限られた時間があるからね。」
「…そうだよな。」


何動揺してんだ、俺。
さっさと振れば良かったんだって、分かって良かったじゃん。
良かった良かった、うん、良かったんだよ。

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