第36話 ゲーム ページ36
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孤爪研磨。
それが彼の名前らしい。
鉄くんの幼なじみで、趣味はゲーム。バレーは、鉄くんの影響で始めたらしい。
というか鉄くん、幼なじみいたんだ。
初知りなんだけど。
でもそっか。ふつう、訊かれなきゃ言わないよね、そういうのって。
鉄くんの幼なじみと聞くと、どうしても鉄くんっぽいキラキラしてる人を想像してしまうけど、彼はそれとは真反対だった。
静かで、クールで、なんというか、世間に興味なさそうな感じ。
でもその独特な雰囲気、キライじゃないかも。
部室の外でみんなが着替えるのを待っていると、一足早く、噂の彼がゲーム片手に出てきた。
こんなときでもゲームするんだ。
内心ちょっと引いた。
「孤爪くん」
「研磨でいいです」
「け、研磨くん」
「何ですか」
研磨くんは、ゲームから顔を上げて、気だるそうに私を見る。
「てっ…黒尾くんの幼なじみだって…」
「はい…まぁ、そうですけど。…というか、俺の前では取り繕わなくていいですよ。……いろいろ、知ってるので」
いろいろ知ってるって、何それ。ものすっごく気になります。
鉄くん、あなたは彼に何を吹き込んでるの？
そんなことを思いつつ、『鉄くんの子どもの頃ってどんな感じだったの』と、気になってたことを訊いてみた。
「……ませガキ」
「ぷっ、言い方悪っ」
でもわかる。鉄くんをちっちゃくしたら、絶対ませガキだと思う。
全てを小馬鹿にしてそうだもん。
そのときふと、研磨くんがやってるゲームの画面が目に入った。
「うわっ、研磨くん、それ、こないだ出たやつだよね？」
「Aさんもやってるんですか？」
「やってる。たぶん全然研磨くんには及ばないけど。私、3番目の街のイベントのところで詰んでるし」
「3番目って、たしか奇跡の水晶取って来いってやつ…」
「そう。あの洞窟迷うし敵強いしで」
すると、研磨くんはものすごいスピードで、両手の親指を動かして、超端的で、超わかりやすい攻略法を伝授してくれた。『その次はここの壁を抜けて…』みたいな感じで。
「す…すご……」
唖然とするけど、研磨くんの表情は一切変わらない。
それがまた、ゲームへの熱量と見合ってなくて、私的にはツボだった。
「うえっ、研磨とAが仲良くしてる」
「…悪い？」
「攻略法教えてもらってるの」
「…そっか……悪かねぇけど…」
鉄くんはそう言って、眉をひそめた。
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作者名：pomme | 作成日時：2022年5月20日 7時
