第35話 お目見え ページ35
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「……うっ…わぁ……緊張したぁ……」
猫又監督にお会いした後、ドッと肩の力が抜けた私は、鉄くんに寄りかかって、深く息を吐いた。
『よかったな!Aちゃん!』と、ニコニコ笑う夜久くんとは対照的に、鉄くんは浮かない顔をしていた。
「辛い。Aと堂々とイチャイチャしてぇよ」
「まあまあ、部活以外なら問題ねぇから。な?Aちゃん」
「えっ」
問題ないけど……って、夜久くん、私の代わりに何てこと言ってんの。
そんな二人の背中を、ドキドキしながら追いかけた。
音駒高校バレー部のみなさん、優しいといいなぁ……。
そう思ったそのとき、『えっ!だ、誰すか!その人!』と、コワモテの金髪モヒカンの人が、私たちの前に立ちはだかった。
えっ、なに、誰。怖。
鉄くんの知り合い?
どこからか急に現れた彼は、私に向かってガン飛ばすのかと思ったら、意外にオドオドしている。
なぜ。
てかなに、そのヘアスタイル。学校の許可降りてる?
鉄くんのシャツを掴んで、『だれ?』と、小声で訊ねる。
「山本。バレー部の一年」
えっ、バレー部なのこの人。というか、後輩?
恐る恐る彼を見ると、目が合ったけど、すぐに逸らされた。
「だ、誰なんすか」
さっきからそれしか言わないじゃん。
鉄くんもそう思ったのか、フッと小さく笑って、『今日からマネージャーやってくれるんだよな?』と、私に目配せした。
「Aです。よろしくお願いします、山本くん」
そう言うと、山本くんは『なっ、何で名前知って…!えっ、マネージャー!?』と、派手に驚いて、なぜか頬を染めた。
「山本、お前ヤベェな」
夜久くんがケラケラ笑う。
『ヤバい』『ヤバくないっす』と争うふたりを微笑ましく見ていると、後ろから『邪魔です』と言う、冷めた声が聞こえた。
姿勢悪い。
目つき悪い。
プリン頭。
意味不明な三拍子が揃った彼は、私を見るなり、『クロから話は聞いてます。バレないようにせいぜい頑張ってください』と、冷え切った声で告げた。
えっ、ちょっとまって、キミ誰。
クロ?鉄くん?
混乱する私の耳元で鉄くんが囁く。
「アイツ、ああ見えて悪いヤツじゃねぇから。後でちゃんと説明する」
そう言って、私の頭をポンと撫でた。
音駒高校バレー部、思ってた以上に変な人多い……?
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作者名:pomme | 作成日時:2022年5月20日 7時