第72話 ちょっと強がる ページ22
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他のみんなはそれぞれ話したり休憩してたりする。だからたぶん私たちの話は耳には入らないはず。
それでも、どうしても小声で言いたい。
こういうのほんと照れるから。
「引かないでね…お願いだから」
最後の忠告。修也が『わかってる』と微笑んだ。
心臓がきゅってなる。
修也の柔らかい表情見てるだけで、胸の奥がきしきし音を立てた。
「私、もう少ししたらマネージャー辞めるでしょ？」
「ああ、そうだな」
「うん。……だからね、辞めたら修也とあまり会えなくなるから、なんて言うか、その……、私が辞めた後も毎日とは言わないけど会えたら嬉しいなぁって……思ってるんだけど…」
話してるうちに、だんだん顔が紅潮していくのが自分でもわかって、より一層恥ずかしくなってる。
そのせいで、“毎日とは言わないけど”とか強がっちゃって。ああ、やだ自分のこういうとこ。
「どう…かな？」
じわじわと汗の滲んだ手を握りしめて、修也の方を向いた。
ドキドキと、さっきとは違う意味で鼓動が早くなる。
すると突然、修也が私の手首を掴んだ。
えっ、何？
「すみません、監督。A先輩が怪我したので部室で手当てしてきます」
監督の返事も待たず、修也は私の手を引いて、早足で歩き出した。
「えっ、ちょっと修也？私怪我なんか…」
掴まれた手を離そうとすると、『いいから』と、足を止めない。
部室に着くと、早く入れと急かすように私の背中を押す。
困惑してる私をよそに、修也は部活のドアの鍵を静かに閉めた。
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作者名：pomme | 作成日時：2021年3月22日 10時
