第70話 答えは一つだけ ページ20
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変な噂が良い思い出なのかはさておき、何だかんだお互いに悩んで今に至ったってことで、ね。
今が楽しかったら、それで良い。そう思った。
「好きなんだ、Aのことが。ずっとこうしてたいと思ってたんだ」
そろそろ戻ろうかって話してる最中に、修也が不意に呟いた。
「あ、ありがとう」
真っ直ぐに言われると、どうしても照れて、素直に顔を見れない。
だから俯きながら言葉を返した。
すると修也は、私の髪を柔らかく撫でながら、顔を近づけて額と額を合わせた。
触れたところから伝わる体温に、ドキドキと鼓動が弾む。
顔を離すと、今度は私の頬に手を当てて、ふわりと微笑んだ。
「一途すぎるな…」
「ん？」
「いや、前にAに『一途だね』って言われたことを思い出してな」
「言ったかも」
あの時はまだ、こんなふうになるとは思ってなかったから、かなり悲観的に考えてたような…。
“豪炎寺くん”の一途の相手が私だとは思わないし、てか、そんなこと訊かなきゃよかったって思ってたくらいだし。
それが今じゃ、この通りで。現実は想像を遥かに超えてた。
目が合うと、君はまたふわりと笑った。頬がちょっと赤い。
たぶん、私の頬も。
胸の奥の深いところがキリキリして痛いのに、甘い。
沈黙すら心地良く感じてしまう。
そんな、柔らかな空気が私たちを包んだ。
修也が私の頬を親指でさらりと撫でると、また、心臓がぎゅっとした。
「A、これからも一途なままで、いさせてくれないか？」
らしくないお願い。
返事はひとつしかないって、君だって知ってるはず。
なのに敢えて訊いちゃうとこ、らしくなくて可愛い。
修也の両手を握って、ゆっくりと頷く。
それから、『良い』って言おうとしたそのとき、唇を塞がれた。
一途なのは修也だけじゃない。
私も、いわば一途みたいなもの。
だから同じ。私も、君のことをずっとずっと好きでいたいんだ。
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作者名：pomme | 作成日時：2021年3月22日 10時
