第67話 当たり前のこと ページ17
．
「あはは…これは……」
朝。
洗面所の鏡の前で立ち尽くした。
あのあと、シャワーを浴びたときには全く気づかなかったんだけど…。
これは…ねぇ。
身体に残るたくさんの“印”。赤く染まったそれを指先でなぞった。
ついでに薄っすら残ってる脇腹のアザも。
筋肉痛でいたるところがミシミシいってる。つらい。
もう少し手加減してくれたっていいのに。私をもっと労ってよね？
修也の体力はきっと底なしだ。
それを昨日思い知った。
想像していなかったわけじゃないけど、より一層…って感じ。
じわじわと込み上げる怒りにも似た何か。いやでも、私も望んだんだからな……うん…。ちょっと反省。
「…まぁ、いっか」
「何がいいんだ？」
突然後ろから声をかけられ、肩がピクリと跳ねた。
鏡の中の修也と目が合う。
開いたシャツの隙間から覗く赤い跡を見て、『ああ、それか』って納得したような表情をした。
すると、鏡越しに私の目を見ながら、腰を抱いて、それにゆっくりと指を這わせた。
くすぐったくて、思わず身を捩る。
クスリと笑った修也が、私の耳元で『俺のA』と、つぶやいた。
胃のあたりがぞくっとした。
「な、何言ってんの」
「ん？」
何も特別なことじゃ無いけどって感じの顔。
当たり前のことを言っただけだって。
でもね、修也のそれ、とんでもない爆弾みたいな、ものすっごい破壊力があるの。
その証拠に、ほら、わかる？私の心臓、ありえないくらい跳ね上がってる。
ドキドキと高鳴る鼓動と、火照る身体。
それに気づいた修也が、『照れすぎだ』って、笑った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 86人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：pomme | 作成日時：2021年3月22日 10時
