第98話 風物詩だね ページ49
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合宿が終わり、久々の完全オフの日。
この日のために新調した浴衣に、袖を通して。
セットした髪の毛が乱れてないか、何度も鏡でチェックした。
お母さんに呆れられるくらい、何度も。
それでもまだまだ不安だった。
可愛いなって、いつもと違うなって思われたいし。ドキドキしてほしい。
ささやかだけど大胆な願いを込めて。
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待ち合わせ場所は、浴衣着てる人でごった返していた。
その人たちと自分を見比べて、少し落ち込む。
みんな可愛くて、大人っぽい。
思わず視線を落とすと、ちょうどその先に藍色の下駄を履いた足が、こっちに歩いてくるのが見えた。
「悪りぃ、待たせた」
顔を上げて、ハッと息を呑んだ。
下駄と同じ、藍色の浴衣。少しまくった袖から見える、筋肉質で真っ白な腕。
すらりとした首筋に、少しだけ覗く鎖骨。
色っぽくて、というか、かっこよすぎてフリーズした。
モデルじゃん。
スタイル良。
「あっ……と、飛雄くん、めちゃくちゃかっこいい」
何か口から勝手に溢れ落ちた。
だって、かっこいいんだもん。
劣等感とか、吹き飛んじゃうくらい。
ふわりと笑った君は、マジ、おもしろいくらいかっこいい。
「Aも可愛い。似合ってる」
かっこよすぎるので、そんな殺し文句言っちゃダメです。
ざわざわと肌が粟立つ。
不意に頬に感じた、自分のじゃない、指先の熱。
愛おしむように柔らかく撫でて、君は言った。
「誰にも見せたくねぇな」
まって。
どこで覚えてきたの、そんなセリフ。
あとなんか、すんごいちっちゃい声で、『他のヤツ見たら殺す』とか聞こえたよ。
物騒。
でも正直わかる。
飛雄くんのこと、他の人がジロジロ見てたら超嫌だし、『隣にいる超かっこいい人、私の彼氏だから!』って、そういう人たちに宣言して回りたいくらいだ。
だから、お互い様って感じ?
よくわかんないけど、いっか、それで。
なめらかに、流れるように手を繋ぐ。
物騒なこと思ってても、指と指が触れる感覚に、ドキドキしながらうっとりした。
触れてるところから、今思ってること全部、伝わっちゃってもいいくらいだ。
ちょっと恥ずかしいけど、私の全部、君に預けてもいいかなって思ってる。
なんかね、それくらい好き。
好きだよ。
考えれば考えるほど、心のいろんなところが柔らかな空気と溶け合って、ふわふわ浮いた。
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pomme(プロフ) - riさん» ありがとうございます〜!!🫶🏻 (2022年5月21日 16時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
ri(プロフ) - 最高でした〜〜🥲💗💗💗 (2022年5月21日 10時) (レス) @page50 id: d86ac26d68 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - 黒猫。さん» いつもありがとうございます!!!黒猫さんの熱超ヤバいし、嬉しすぎるし、ありがたいしで狂っちゃう!もうほんと、マジありがとうございます🫶🏻🫶🏻頑張ります〜! (2022年5月6日 20時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
黒猫。(プロフ) - うわああああ!!…わあ。語彙力吹っ飛びました!!もう!好き!コメ欄が黒猫ばっかになってすみません本当に!愛が溢れてまう…!!とりあえず主様を神と崇めさせていただいてよろしいでしょうか!!かっ…げやまぁ!!完結まで応援しますわ…影山との恋の行方を見届けます! (2022年5月5日 20時) (レス) @page42 id: abf8c53ec1 (このIDを非表示/違反報告)
pomme(プロフ) - 黒猫。さん» ありがとうございます!!!嬉しすぎて、もう泣いちゃう!!素敵なありがたすぎるお言葉、何度も読み返してニンマリしてます……🫶🏻いい夢見れそう… (2022年4月11日 23時) (レス) id: 13950c2c2a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:pomme | 作成日時:2022年1月20日 23時